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📊 Event Report

【AOGU株式会社】ぬいぐるみ×看護×生成AIで挑む。認知症の「パーソンセンタードケア」を社会実装するロボット「ここちゃん」の挑戦

VENTURE PITCH ONLINE
2025/12/18
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認知症だった祖母の「もう殺して」という言葉、家族の限界から生まれた創業の原体験

皆さん、はじめまして。AOGU株式会社代表取締役CEOの坂田惟之と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

私たちは、認知症の新しいケアシステムを開発しています。この事業を立ち上げたきっかけは、私の個人的な原体験にあります。私の祖母はアルツハイマー型認知症を患っており、当時80代でした(のちに86歳で他界しました)。認知症が進行する中で、祖母からは毎日のように「もう殺して」「死にたい」という言葉が日常的に発せられていました。

認知症の方は、記憶は薄れていっても感情は変わらないと言われています。しかし、当時家族であった私たちは、祖母のその極限状態の感情に対して、十分に寄り添う余裕を持つことができませんでした。介護を勉強したはずの家族であっても、毎日の介護による忍耐と感情の限界から、ついイライラしてしまい、関係性が悪化してしまう。この「どうしようもない状況を何とかしなければならない」という強い思いを学生時代から抱き続けてきたことが、私たちの原点です。

認知症ケアの国際的な標準として「パーソンセンタードケア(その人の人生や価値観を理解し、本人の視点に立つケア)」が提唱されています。一人一人の行動の意味を理解し、安心できる関係性を持ち続けることが何よりも重要です。しかし、これを人間だけでやり続けるには限界があります。家族には忍耐と感情の限界があり、一方でプロの介護スタッフの方々にも、業務の多忙さから一人の利用者の不安を最後まで聞き続ける時間的限界があります。だからこそ、人間には難しかったこの「持続的な受容と傾聴」を、テクノロジーによって解決したいと考えました。

熟練看護師の脳内をAI化。「受容・忍耐」と「コンテキスト理解」の空白地帯を埋める

従来のスマートツールや見守りロボットは、いくらでも相手をできる「忍耐」はありましたが、その高齢者がどんな人生を歩み、何に誇りを持っていて、何に不安を感じやすいかという「背景(コンテキスト)の理解」ができませんでした。そのため、認知症の方が混乱(BPSD)を起こした際に、適切なケアの代替ができませんでした。

そこで私たちは、生成AIを活用し、「持続的な受容・忍耐」を持ちながら「高度なコンテキストの理解」も両立できる独自のケアシステムを構築しました。具体的には、愛らしいぬいぐるみ型の対話ロボット「ここちゃん」を開発しています。

「ここちゃん」の特徴は大きく3つあります。

1つ目は、認知症の方に徹底的に最適化されたUI/UXです。タブレットやスマホなどの画面操作は認知症の方には困難ですが、ぬいぐるみによる「ドールセラピー」は国際的にも愛着形成に非常に有効とされています。また、「話すロボットであること」自体を忘れてしまっても、触れ合うだけで自然に会話が起動する設計にしています。例えば、夕方の「夕暮れ症候群」などで不安になりやすい時間帯になると、ここちゃんから自然に問いかけを行い、安心できる対話を開始します。

2つ目は、社内にいる老年看護の専門看護師の「脳内(知見)」をアルゴリズム化している点です。熟練の看護師は、高齢者の病歴やこれまでの経歴、直近で訴えていた混乱などを脳内で整理しながら、先手を打って「何が不安なのか」「何が辛いのか」を問いかけ、心を開かせます。この高度な対話プロセスをアルゴリズム化しています。

3つ目は、対話を通じた「ケア最適化データ」の蓄積です。どのような背景を持つ方が、どういう状態で、どのような問いかけに対してどう反応し、落ち着いたのか。このデータを蓄積することで、対話の精度をさらに向上させ、個別最適なケアを再現可能にしていきます。

すでに15名ほどのモニターの方々に利用いただいていますが、定時の水分補給の促しや、居眠りの防止、さらには家族との会話が減っていた方の発話量が劇的に増加するなど、確実な生活の質の改善実績が出ています。特に、徘徊や暴言(BPSD)といった周辺症状が現れた際にも、ここちゃんの一言で落ち着くといった驚くべき成果も確認されています。

初期費用2万円弱・月額7,000円。3兆円の巨大な認知症・MCI市場へのB2B2C展開

ビジネスモデルとしては、来年4〜5月頃に正式なデバイスのリリースを予定しています(現在はMVPを用いた実証実験の段階です)。高額な見守りロボットとは異なり、初期費用は2万円弱に抑え、月額約7,000円の利用料で提供するサブスクリプションモデルを設計しています。

販売チャネルとしては、エンドユーザーへの直接販売(2C)だけでなく、ケアマネジャーや訪問看護師といった介護・医療のプロフェッショナルとの連携(B2B2C)を重視しています。専門家を通じて「ここちゃん」を導入いただくことで、利用の定着と信頼性の向上を図ります。

市場性については、MCI(軽度認知障害)を含む対象者は日本国内で約1,000万人存在し、市場規模(TAM)は約3兆円と推定されます。その中でも、対話による介入効果が最も期待できる中等症の方々(約100万〜150万人)を主要なターゲット(SAM)とし、ソム(SOM)としては300億円(その約10%のシェア獲得)を目指して事業を推進してまいります。

現在は正式リリースに向けた資金調達活動中であり、サービス連携や導入にご興味のある企業様、ならびにVC・CVC、エンジェル投資家の皆様との出会いを探しております。どうぞよろしくお願いいたします。

質疑応答・フィードバック

小川氏(コメンテーター):坂田さん、ありがとうございました。ご自身の祖母の認知症介護における葛藤という原体験、そして「パーソンセンタードケア」をテクノロジーで代替・補完するというアプローチは非常に社会的意義が大きいと思います。

これまでのアニマルセラピーや、過去に市場に出ていたアザラシ型ロボット(パロなど)のような先行プロダクトと比べた際、ビジネスモデルや価格設定、チャネル開拓の面での違いについて、改めて教えていただけますか?

坂田氏:ありがとうございます。先行するアザラシ型ロボットなどは非常に高価(約40万〜50万円)であり、一般のご家庭が導入するにはハードルが非常に高いという課題がありました。私たちは、初期費用を2万円弱、月額約7,000円のサブスクリプションとすることで、世帯の経済的負担を大きく下げています。

また、先行ロボットは「鳴き声や動きによる愛着形成」が主であり、言語的な「コンテキスト(人生背景)に基づいた会話」による認知機能への介入や、徘徊などの周辺症状(BPSD)の緩和までは設計されていませんでした。私たちは生成AIと老年看護の知見を掛け合わせ、双方向の文脈のある対話を実現している点が技術的な強みです。

チャネルについては、高齢者が直接スマホで申し込んだり設定したりすることは難しいため、ケアマネジャー様や訪問看護師様といったプロのチャネルを経由してご家庭に届ける「B2B2C」のルートを重視しています。ケアの現場に深く入り込むことで、アクティブ率を維持し、より価値のあるケアデータを蓄積していきたいと考えています。

小川氏:なるほど。デバイスを安価に提供し、月額サブスクで老年看護のAI知見を提供するという設計ですね。また、ケアマネジャー経由のルートは導入のハードルを下げる上で非常に有効だと思います。

市場規模について、300億円というSOMを掲げられていますが、これはターゲットである中等症の100万〜150万人のうち、どれくらいのシェアを想定しているのでしょうか?

坂田氏:はい。中等症の方々(約100万〜150万人)に対して、私たちのソリューションが最もフィットする層におけるシェア約10%を獲得することで、300億円規模の売上(SOM)に達すると試算しております。

小川氏:これからの超高齢化社会において、介護負担の軽減と認知症患者の尊厳を守るプロダクトとして非常に期待しています。ぜひ正式リリースに向けて検証を重ねてください。

坂田氏:ありがとうございます。がんばります。