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📊 Event Report

【株式会社ビーフソムリエ】世界初の「牛の美味しさ定量評価」でブランド和牛を科学する。12ヶ月例での肉質予測AIが起こす畜産・流通革命

VENTURE PITCH ONLINE
2025/11/20
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300以上のブランド牛が乱立する「Excel地獄ならぬブランド乱立」を、科学の力で整理する

皆さん、よろしくお願いいたします。株式会社ビーフソムリエ代表取締役の松岡俊樹と申します。本日は、世界で初めて「牛の肉質・肉量の定量評価」を早期に可能にする私たちのAI技術と、それによって「見える美味しさ」を追求する事業についてお話しさせていただきます。

私たちのビジョンは、和牛を育てる生産者の皆様が、自分たちの理想とする高品質な牛を迷わず育てられるようにすること。そして、流通業者や消費者の皆様に対して、扱っている和牛の品質や味わいを科学的に可視化し、誰もが分かりやすく納得して取引できる未来を作ることです。

現在、円安や情勢不安の影響により、牛の輸入飼料(エサ)やエネルギーの価格が劇的に高騰しています。これによって、子牛を育てる繁殖農家や、出荷まで育てる肥育農家の経営は非常に強く逼迫しています。生き残りのためには、自社の牛の「ブランド化(付加価値向上)」が極めて重要です。

しかし、ここで深刻な問題となっているのが「ブランド牛の乱立」です。現在、日本国内には300種類以上のブランド牛が存在しています。実はブランド牛の定義には法的なルールがなく、極端に言えば私が今日から「松岡牛」と名乗って出荷してもブランド牛として通ってしまいます。これに加え、従来の「A5」「A4」といったサシ(脂肪交雑)の量を中心とした格付け評価だけでは、「本当の美味しさ」が消費者やバイヤーに伝わりにくいという限界がありました。だからこそ、味わいや品質を客観的に示す「定量的な評価指標」が必要とされているのです。

そもそも、肉牛の量と質を決定する因子のうち、60%は「遺伝要因(決闘・血統)」であるとされています。これはDNAを解析する「ゲノミック評価」によって見ることができます。しかし、残りの40%を占める「肥育要因(各農家の育て方や環境、エサ)」を可視化する技術は、これまで存在しませんでした。そのため、同じ優れた血統の牛であっても、農家ごとの育て方の違いによって肉質や出荷時の成績に大きなばらつきが生じてしまい、価格もばらついてしまうという問題がありました。

これまで農家は、高額な超音波エコー検査機を使って生体内の肉質を測ろうとしてきましたが、エコーの画像診断は極めて高度な技術を要するため、扱える専門人材が不足し、機械はあっても宝の持ち腐れになっているのが実情です。また、牛舎にカメラを設置したり、牛に首輪型センサーを付けるIoT技術もありますが、それらは「行動量(病気の兆候)」は分かっても、肝心の「生体内の肉質情報」を可視化することはできませんでした。

12ヶ月例での採血データから将来の肉質・肉量を予測する「AIBF技術」

私たちは、近畿大学が開発した世界初の技術「AIBF(AI Beef)技術」を用いて、この課題を解決しました。

通常、肉牛は生まれてから約30ヶ月前後で出荷されます。私たちの技術では、出荷よりもはるか手前の段階である「12ヶ月例前後」の牛からごく少量の血液を採取します。その血中に含まれる特定のタンパク質(バイオマーカー)を検出し、私たちの開発したAIモデルに分析させることで、その牛が30ヶ月例で出荷される時に「どのような肉質(サシの入り方)になり、どれだけの肉量(枝肉重量)になるか」を高精度で予測します。

この血液1本による定量化技術によって、私たちは生産者ごと、あるいはブランドごとに、牛たちの肉質の「ばらつき」をグラフ上で視覚的にマッピングすることができます。

例えば、あるブランド牛として出荷されている牛群をマッピングすると、高い品質の中に、ポツンと品質が外れた「外れ値の牛」が存在していることが分かります。こうした牛は、実際に出荷されて食べられた時に「思った味と違う」というブランド毀損に繋がってしまいます。私たちはこれを早期に検知し、排除、あるいは育成方法の改善へ繋げることができます。

この技術は、生産現場だけでなく「流通・販売」のあり方も劇的に変えます。

私たちは、日本酒やワインのように、それぞれの和牛が持つ味わいや特徴をマッピングした「和牛の味わいマップ」を流通業者やバイヤーに提供します。さらに、ばらつきの範囲にしっかりと収まっている高品質な和牛に対しては、科学的な「美味しさの認定証」を発行します。

これにより、神戸牛や松阪牛のような超有名ブランドではなくても、地方で真摯に育てられた、有名ブランドに負けない美味しさを持つ牛に対して、正当な「価値(高い取引価格)」をつけることが可能になります。バイヤーも安心して高く買うことができ、輸出の際にも強力なエビデンスとなります。

2〜3ヶ月で打ち手の効果を検証。エサの最適化からオリンピック制覇へ

生産農家にとっても、この早期予測は劇的な打ち手を可能にします。

12ヶ月例の時点で牛のばらつきを可視化できれば、「この牛たちにはこの栄養添加物を加えよう」「この配合飼料に変えよう」といった飼料設計の軌道修正が可能になります。

従来は、エサや環境を変えた後、その効果が良かったかどうかは「30ヶ月例での出荷(屠殺)」まで結果が分からず、ギャンブルのような状態でした。しかし私たちの技術であれば、エサを変えた2〜3ヶ月後に再度採血を行うことで、牛たちのバイオマーカーがどのように改善方向へシフトしたかをリアルタイムに確認できます。そのため、科学的エビデンスに基づいた確実な「打ち手の効果検証」が実行できるのです。

酪農(乳牛)の分野では、毎日搾る牛乳の成分を調べることで、牛の健康状態を評価しエサを調整する「飼料設計ソフト」が当たり前に普及しています。しかし肉牛の分野では途中の状態が分からないため、こうしたエサの最適化ソフトが存在しませんでした。私たちは、このAIBF技術によってエサの飼料設計を科学的に最適化するため、大手飼料会社(エサメーカー)様とも深く連携してPoCを進めています。

現在の具体的な取り組みとして、5年に一度開催される「和牛のオリンピック(全国和牛能力共進会)」での連覇を目指し、前回優勝したトップ農家様とタッグを組んで当社の牛群管理AIを導入しています。また、地方の新しいブランド牛の立ち上げにおいて、その科学的特徴を定義するプロジェクトや、JAグループ(JA広島様、JA愛媛様、JA宮崎様など)からの出資・営業支援を受け、全国の産地への導入を進めています。さらに、伊藤ハム米久ホールディングス様などの大手食肉流通業者との共同検証(PoC)も開始しております。

私たちのチームは現在4名で活動しており、うち2名は近畿大学でこの技術を開発した「松本研究室」出身の第一線の研究者です。今回調達する資金を活用して、AIの画像・データ解析専門家、および畜産・流通分野の専門営業、そしてCFOとなる人材を採用し、体制を大幅に強化してまいります。

まずはこれからの10年、このAIBF技術で世界の「和牛・畜産市場」のデファクトスタンダードを確立し、将来的にはこの生体バイオマーカーとAI解析技術を他の家畜、さらには人間のウェルネス分野へも応用展開していく構想を持っています。志を共にしてくださる投資家の皆様からのご連絡をお待ちしております。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(伊藤氏):松岡さん、ありがとうございました。和牛市場が巨大である一方で、美味しさの評価指標や肥育のプロセスがこれほどブラックボックスであり、そこに血液1本とAIで切り込むというアプローチは非常に将来性が高く、面白いと感じました。

こういった大学発の技術系スタートアップは、技術自体は素晴らしくても「それをどうビジネスとして社会実装し、マネタイズするか」という点で、ファウンダーの熱量やバックグラウンドに非常に大きく依存すると思います。松岡さんがなぜこの技術に着目し、どのようにビジネスとしてグロースさせようとしているのか、ご自身のバックグラウンドを含めて教えていただけますか?

松岡氏:ご質問ありがとうございます。私自身のルーツでお話ししますと、実はこのAIBF技術の開発元である近畿大学農学部の松本研究室の出身でして、松本先生のもとで最初に学位(博士号)を取得したのが私でした。当時からマウスや牛の遺伝子解析、ゲノムの研究にどっぷりと浸かっており、全国の畜産試験場や農家との現場の繋がりを学生時代から持っていました。

大学院修了後は一度アカデミアを離れ、アメリカのミシガン大学での研究員、大阪大学発のバイオベンチャーの立ち上げ、そしてライフサイエンス企業を経て、前職ではスペインに本社を置く不妊治療分野の遺伝子検査会社において、日本法人の立ち上げから事業拡大を8年間率いました。

実は、人間の不妊治療や最先端の生殖医療で使われている遺伝子検査技術の多くは、もともと「畜産(牛の効率的な繁殖)」の分野で開発された技術が人に転用されて臨床に入ってきたという歴史があります。前職での経験を通じて、私は「生命科学の技術をいかに適法に、かつ使いやすい検査サービスとして市場に定着させ、ビジネススケールさせるか」という社会実装のノウハウを徹底的に叩き込みました。松本先生からこの牛のバイオマーカー技術の話を聞いた時、今度は「人間で培った社会実装のノウハウを、ルーツである畜産の現場に逆輸入して恩返しするタイミングだ」と強く確信し、この会社を立ち上げました。この技術をビジネスとして着地させられる人間は、日本中で私しかいないという強い自負を持っています。

伊藤氏:なるほど。技術のバックグラウンドと、遺伝子検査サービスをゼロから日本市場に定着させたビジネスのバックグラウンドの両方をお持ちなのですね。バックグラウンドをお聞きすると、この事業の成功確率がぐっと高く見えてきます。

このビジネスは、裏側のバイオ技術が素晴らしいことは前提として、いかに流通側やバイヤーを巻き込み、「認定証」としてのブランド認知(デファクトスタンダード)を取れるかという、一種のマーケティングやアグリゲーションの戦いになると思いますが、そのあたりの戦略はどうお考えですか?

松岡氏:まさにおっしゃる通りです。農家さんに「良い検査技術だから使ってください」とアプローチするだけでは、コスト負担になるため広がりません。大切なのは、「この検査(認定)を受けているから、バイヤーや輸出業者が通常より高く買ってくれる」という、川下(流通)からの引っ張る力(プル型インセンティブ)を作ることです。

実際、現在和牛の輸出を行っているバイヤーの皆様と対話を進める中で、「有名ブランド(神戸牛など)は名前で売れるが、地方の無名なA5和牛は、味は抜群に美味しくても買い叩かれてしまう。客観的に美味しさを示す認定があれば、自信を持って高値で仕入れ、海外の富裕層に提案できるのに」という強いニーズを発掘しました。

そのため、私たちはまず大手食肉卸や輸出業者、伊藤ハム米久ホールディングス様といった流通のキープレイヤーとPoCを組み、「Zaimo(認定)を通した牛は高値で流通する」という実績とブランド認定スキームを構築しています。これにより、農家側にとっても「検査費用を払っても、それ以上に高く売れるからZaimoを受けたい」という力学が働きます。さらに、飼料会社と組んで「Zaimoのデータを元に、エサの効果を保証する」というパッケージを展開することで、農業・畜産業界全体のプラットフォームとして早期に面(シェア)を抑えていく戦略です。

伊藤氏:ワインの格付けのように、「美味しさの科学的認定」が買い取り価格を保証するインフラになるわけですね。非常に大きなスケールと社会的意義を感じます。資金調達も含め、今後の展開を応援しております。

松岡氏:ありがとうございます。日本の和牛を科学で世界へ届けるため、全力で進めます。