皆さん、よろしくお願いいたします。Edgewater株式会社代表取締役の福澤雅彦と申します。本日は、私たちが構築している「予測と予防のヘルスケアデータプラットフォーム」についてご紹介させていただきます。
世の中で「病気を予防することが大事だ」とよく言われますが、私たちは一歩踏み込んで、「将来かかるはずの病気を高い精度で『予測』しなければ、具体的な予防などできないはずだ」という強い考え方に基づき、この事業を立ち上げました。
私たちは、イギリスの科学者フランシス・ゴルトンが唱えた「病気は遺伝的要因と環境要因の両方が、様々な割合で寄与して発症する」という説をベースにデータ解析モデルを設計しています。
具体的には、
- 遺伝的要因(一生変わらないDNAデータとしての遺伝子検査)
- 環境要因(毎日の食事や運動などの生活習慣の記録)
- 現在の健康状態(血液から読み解く独自の免疫検査)
という3つのデータを統合します。これらのデータをビッグデータ化し、AIによって解析することで、個々人の将来の免疫状態、ひいては具体的な疾患リスクを予測します。
従来の医療やヘルスケアのやり方では、免疫・遺伝・生活習慣の統合データが存在しないため、発症の予測は困難であり、病気になってから治療するしかありませんでした。私たちはこれらのデータを長年にわたり地道に収集し、予測を可能にすることで、発症を未然に防ぐか、極めて軽症のうちに抑え込む「完全な予防医療」を実現します。
この事業において極めて重要なのが「予測モデルの精度」です。
どれだけAIやビッグデータ解析の技術が発展しても、病気という現象は極めて複雑です。そこで私たちは、AIの技術力だけに頼るのではなく、専門の先端医学界との深い協業を選択しました。現在、日本の最先端の研究機関である「理化学研究所(理研)」の自己免疫疾患研究チーム(山本和彦先生のチーム)と共同研究契約を結んでおります。
彼らは長年にわたり、自己免疫疾患をはじめとする病気を「免疫」と「遺伝子」の二大軸で探求し、原因解明と治療法をリードしてきた世界最高峰のチームです。私たちの「予測と予防の融合」というコンセプトと理研の目指すゴールが完全に一致し、意気投合してこの共同研究がスタートしました。
事業を成功させるためには、マネタイズ(収益化)のモデルが極めて重要です。このヘルスケア・医療業界において、最も強固で持続的な購買力を持つのは「製薬会社」に他なりません。
今、製薬会社は極めて大きな課題に直面しています。
日本製薬工業協会(製薬協)の最新のレポートでも切実に訴えられていますが、日本の製薬会社はグローバルメガファーマに比べて規模が小さく、競争を勝ち抜くためには「医療情報データベース(リアルワールドデータ:RWD)」の利活用が不可欠となっています。
製薬会社が研究開発や新薬の創薬、臨床モニターを進める上で、日常のカルテデータ(診療データ)だけでは全く足りません。ゲノム、免疫(プロテオム)、オミックス、マイクロバイオームといった、疾患固有の非常に詳細な生体データ(疾患プロファイルデータ)を求めているのです。
しかし、製薬会社の研究員には決定的なペインがあります。彼らは医師ではないため、直接患者(人間)と接触してデータを収集することが法律上できません。そのため、普段はマウスやラットといった実験動物を使って研究を行っています。
しかし、マウスと人間の免疫系統は大きく異なっており、マウスで成功した薬が人間では効かないというケースが多発しています。製薬会社は「人間の詳細な免疫データ」を喉から手が出るほど欲しているのです。
私たちは、この課題をクリアする独自の収集モデルを構築し、特許を取得しました。
私たちのモデルでは、医療機関(病院)を通すことなく、自宅でできる「郵送型の簡易検査キット(唾液による遺伝子検査、および微量血液による自己採血式の免疫検査)」を用いて、個人から直接データを収集します。
そして、個人に対しては「将来の疾患予測レポート」を無料で提供する代わりに、彼らから「データの製薬会社への二次利用・研究利用に対する同意」を直接取得します。これにより、製薬会社が最も欲しがっている「本人の同意がある、人間の継続的な免疫・遺伝データ」を、極めて安価かつ大量に提供する独自のB2Bマーケットプレイスを構築しました。
過去のデータ取引のエビデンスとして、米国の遺伝子検査会社である「23andMe(トゥエンティースリーアンドミー)」は、保有していた500万人分の同意済み遺伝子データを、英国の大手製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)に約450億円(当時)で提供しました。GSKはこれをもとに40以上の新薬パイプラインを構築し、パーキンソン病の治療薬開発に貢献しています。製薬会社にとって、このような人体の生データアセットは、何百億円を支払ってでも手に入れたいものなのです。
私たちの成長戦略は、日本でこの仕組みを堅実に展開した後、市場規模が100倍大きい「米国市場」で一気に花開かせるビジネスモデルです。
先ほど例に挙げた米国の「23andMe」は、現在1,500万人以上の圧倒的な顧客データを有していますが、致命的なビジネス上の弱点を抱えています。
それは、遺伝子検査(DNA検査)は「一生に1回」しか受けないため、一度検査を売ってしまうと、そのユーザーからリピートで売上を立てる(繰り返しマネタイズする)ことができない点です。そのため、新規ユーザー獲得コストが跳ね上がり、収益性が悪化しています。
そこで私たちは、これら米国の巨大な遺伝子検査会社と「協業」する戦略を立てています。
彼らが持つ1,500万人の会員基盤に対し、私たちが特許を持つ「毎年の定期的な免疫検査(血液データ)」を組み合わせて追加提供するのです。
一生に1回の遺伝子データに、動的に変化する毎年の免疫データを統合することで、疾患予測の精度は劇的に向上します。遺伝子検査会社にとっては「リピート課金のビジネスモデル」を構築でき、私たちにとっては一瞬にして数千万人の顧客データと製薬会社向けのRWDを獲得することができます。会員のわずか0.5%が検査を受けるだけでも、数十万人のデータが集まり、それだけで数百億円規模のデータビジネスが瞬時に立ち上がります。
私たちは、この特許モデルを武器に、製薬会社の新薬開発を加速させ、個人に対しては「病気になる前の的確な疾患予測と個別化された予防」を提供します。これにより、日本、そして世界の医療費を根本から削減する健康インフラを構築してまいります。
キャリア支援や予防医療の領域でデータとサイエンスによる変革を目指す投資家の皆様、そして協業を希望される企業の皆様、ぜひ私たちと共にこの大きな未来を作っていきましょう。ありがとうございました。
コメンテーター(福谷氏):福澤さん、ありがとうございました。医療や製薬業界の深いペインと、それを解消するための独自のデータプラットフォームモデルが非常にクリアに理解できました。
病気になる前の「未病」や「予防」は今非常に注目されている領域ですが、一方で「データをどうやって一般の個人から集めるか」という部分が最大のボトルネックになると思います。病院に行くのが面倒な個人から、どのようにして遺伝子や血液などのハードルの高いデータを集めるのか、具体的な回収プロセスについて教えてください。
福澤氏:ご質問ありがとうございます。まさに「データの回収動線」が私たちの事業の核です。
従来の医療検査は、わざわざ病院へ行って長い待ち時間を経て採血を行う必要があり、これが高い心理的ハードルとなっていました。私たちは、自宅で指先からごく微量の血液を採取できる「自己採血式の簡易検査キット(郵送型キット)」と、唾液による遺伝子検査キットを直接ユーザーの自宅へ届けます。病院を通さず、自宅にいながら数分で完了するため、データ収集のハードルを極限まで下げることができます。
さらに、ユーザーを集めるために「製薬会社が特定の疾患(例えば自己免疫疾患など)の研究ニーズを持っていること」を利用します。私たちはネット等でその疾患の予備軍や関心がある個人を募集し、製薬会社の予算を原資として「無料で検査とAIによる将来の疾患予測フィードバック」を提供します。ユーザーは「無料で自分の未来の健康リスクが分かる」という明確なメリットがあるため、喜んで検査を受け、データの二次利用に同意してくださるのです。
福谷氏:なるほど。ユーザーには「無料で高精度なヘルスチェックができる」というベネフィットを提供し、その原資はデータを欲しがっている製薬会社が支払う。非常に美しく合理的なエコシステムですね。
ただ、製薬会社がこれほど巨額の資金を支払ってまで御社のデータを欲しがる理由について、製薬会社自身が持つ知験や臨床試験との違いをもう少し詳しく教えていただけますか。
福澤氏:製薬会社にとって最も重要なプロセスが、新薬の有効性を検証する「治験(臨床研究)」です。
しかし、製薬会社自体の研究員は「医師」ではないため、法律上、直接患者の体を調べてデータを取ることは治験という非常に限定された枠組みでしか許されていません。そのため、普段の基礎研究では、人ではなくマウスやラットを使って検証を行わざるを得ないのです。
ところが、マウスの免疫系統は人間とは大きく異なっています。製薬会社は「人間における本物の免疫・遺伝データ」を強く求めていますが、医療機関を通じて治験以外でそれを集めるには膨大なコストと倫理的・法律的手続きが必要でした。
私たちのモデルは、医療機関を介さずに、個人が自主的に「無料のヘルスケアサービス」として検査を受け、データの二次利用に同意する形をとります。これにより、非常に安価かつ安全に「人間の詳細な生体データ」を網羅したリアルワールドデータ(RWD)を蓄積することができます。この収集プロセスは特許を取得しており、競合が簡単には模倣できない強みとなっています。
福谷氏:ありがとうございます。製薬会社が抱える「人のデータに直接アクセスできない」という構造的なジレンマを、特許取得の郵送簡易キットとユーザーへの無料還元でブレイクスルーしたわけですね。
もう一つ、アメリカ市場への展開について、先行する23andMeなどの遺伝子検査会社との具体的な協業イメージについても興味深く伺いました。彼らが抱えるマネタイズの課題を御社がどう補完するのか、もう少し詳しく教えていただけますか。
福澤氏:はい。米国の23andMeは1,500万人の遺伝子データを集め、GSK(グラクソ・スミスクライン)に約450億円で提供するなど大きな実績を作りました。しかし彼らのビジネスモデルは、「遺伝子検査を1回売って終わり」という単発課金モデルです。遺伝子は一生変わらないため、毎年検査を売ることができません。その結果、売上をリピートさせることができず、新規顧客獲得の鈍化とともに非常に苦しい経営を迫られています。
そこに私たちの「毎年の免疫検査(血液データ)」を提案します。
「一生に1回限りの静的な遺伝子データ」に「毎年動的に変化する免疫データ」を重ね合わせることで、疾患予測の精度は圧倒的に高まります。遺伝子検査会社にとっては、すでに保有している1,500万人の顧客ベースに対し、「毎年のリピート課金・サブスクリプションモデル」を追加でき、経営の安定化に繋がります。私たちにとっては、一から数千万人の顧客を集める必要がなく、彼らの強固な会員基盤に乗る形で米国市場を一気に獲得できます。この相互補完こそが、米国展開における最大の勝ち筋です。
福谷氏:非常に納得がいきました。静的な遺伝子データと動的な免疫データの掛け算で精度を高め、単発課金をリピートモデルに変える。日米の市場の違いとパートナーシップの価値を最大限に活かした素晴らしい戦略だと思います。今後の世界的な展開を楽しみにしております。
福澤氏:ありがとうございます。世界中の人々の健康に貢献できるよう、事業を推進してまいります。