皆さん、こんにちは。GOGEN株式会社代表取締役の和田浩明と申します。本日はよろしくお願いいたします。
弊社は2020年に創業し、現在5期目を迎えた不動産テックのスタートアップです。メンバーはまだ十数名という規模ですが、完全内製のエンジニア集団を擁し、プロダクトの開発力と生産性の高さを評価いただくなど、技術力に強みを持つSaaS企業です。
私自身のバックグラウンドといたしましては、新卒で大手不動産デベロッパーに入社し、長年不動産売買の現場でキャリアを積んできました。その中で社内のDX(デジタル化)プロジェクトなどを主導した経験から、この巨大でレガシーな業界が抱える課題を身をもって実感し、GOGENを創業いたしました。
私たちがフォーカスしているのは、不動産取引の中でも「居住用不動産(マイホーム)」の「売買(バイバイ)」という領域です。
人生において、不動産は最も大きなお買い物です。お客様にとってかける時間も金額も膨大であり、「一生に一度の高い買い物」と呼ばれるほど、生活の幸福に直結する重要なイベントです。しかしその一方で、不動産業界は未だに極めてアナログであり、書類の多さや不透明さからトラブルが非常に多いという側面もあります。
さらに深刻なのが、業界の「担い手不足」です。
驚くべきことに、現在日本の全自治体のうち約14%のエリアには、すでに不動産会社が1社も存在しないというデータが出ています。このままでは国土の流通や管理が滞ってしまうため、国交省も「デジタル技術を活用して、誰でも簡単かつ安全に不動産取引を行えるインフラを作るべきだ」と警鐘を鳴らしています。
法改正の動きとしても、3年前にようやく「書面の電子化(電子契約)」が解禁され、囲い込み規制やマイナンバーカード連携への対応など、アナログからデジタルへの移行期に突入しています。
こうした背景のもと、私たちは「新しいやり方で、人々による不動産を。」というミッションを掲げ、不動産売買の購入・売却手続きをトータルでデジタル化するSaaS「レリーズ(RELYS)」を提供しています。
私たちが提供するレリーズは、不動産会社様とエンドユーザー様(購入者様・売却者様)の間に立ち、売買契約後のあらゆる手続きをクラウド上で完結させるサービスです。
具体的には、契約書のやり取り、本人確認(KYC)、必要書類のアップロード、各種申請手続きなどを一元化します。
不動産取引は、「宅地建物取引業法(宅建業法)」という非常に厳しい法律によって、「いつまでに、何を説明し、どういう手続きをしなければならないか」が細かく規定されています。レリーズは、この法律に準拠した厳格な業務フローをシステム上に落とし込み、必要なタスクや期日の管理を「タスクオートメーション」として完全自動化しています。これにより、営業担当者の確認漏れや書類の不備といったヒューマンエラーを根絶します。
では、実際に家を購入されるお客様側(エンドユーザー様)の体験はどうなるのでしょうか。
エンドユーザー様は、新たに専用のアプリをダウンロードする必要はありません。普段使い慣れている「LINE」を活用し、不動産会社から送られてくるリンクからマイページにアクセスするだけで、すべての手続きを進めることができます。
レリーズは、電子契約大手の弁護士ドットコム様(クラウドサイン)とシステム連携しています。そのため、重要事項説明書や契約書の確認、さらには実印の代わりにSMS(携帯電話番号)認証を組み合わせた高度なセキュリティのもとで、スマホからワンタップで電子署名を行うことができます。
これまで、契約のためにわざわざ平日に有給休暇を取って店舗に赴き、何枚もの書類に手書きで署名・捺印していた手間が、すべて自宅や外出先からスマホ一つで数分で完了するようになります。
私たちのプラットフォームはすでに急成長を遂げており、大手のデベロッパー様や仲介会社様、ハウスメーカー様を中心に導入が広がっています。
現在、レリーズを通じた年間取引数は「2万件から3万件」の規模に達しています。これは、日本で最も取引数が多いとされるトップクラスの不動産会社の年間契約件数を上回る規模であり、不動産売買のインフラとして強固な地位を築きつつあります。
しかし、私たちの目標は「契約書の電子化」に留まりません。
本当に不動産を購入されたことがある方ならお分かりいただけると思いますが、家を買うという手続きは、不動産会社と契約を結ぶだけでは終わりません。その後に、火災保険の加入、引っ越し業者の手配、不動産登記のための司法書士とのやり取り、住宅ローンの申し込みなど、無数の周辺手続きが発生し、それぞれの事業者と個別に書類をやり取りしなければなりません。
私たちは、レリーズ上の「契約データ」をAPIを介して周辺のプレイヤーと接続し、不動産購入に伴うバリューチェーン全体のDXを推進しています。
例えば、火災保険の加入手続きがその良い例です。
従来は、火災保険に加入するために契約書をコピーして保険会社に送り、見積もりが出るのを何日も待つ必要がありました。レリーズでは、アップロードされた不動産契約書から、AIが「構造」「面積」「建築年」といった保険見積もりに必要な情報を自動で正確に抽出します。
さらに、私たちは損害保険各社の基幹システムとAPIでダイレクトに連携しています。そのため、抽出されたデータをそのまま保険会社に送信し、わずか数秒で保険の見積もりを自動生成します。お客様は、自身のスマホ画面上で見積もりを確認し、そのままクレジットカード等で決済を完了させることができます。
今後は、この連携を登記(司法書士)、住宅ローン(金融機関)、引っ越しなど、不動産取引の周辺領域すべてに拡張し、不動産取引を中心とした巨大なデジタルエコシステムを構築します。
さらに、年内には不動産取引の「前工程」にあたるコミュニケーション領域でも、LINEと連携して商談内容の自動文字起こしやAI解析ができる新しいコミュニケーションアプリをリリース予定です。問い合わせから引渡しまで、不動産購入のすべてを一気通貫で滑らかにしていきます。ご関心のある事業者の皆様、是非一緒に不動産取引の未来を作っていきましょう。ありがとうございました。
コメンテーター(福谷氏):和田さん、プレゼンテーションをありがとうございました。不動産という非常にレガシーでトラブルも多い巨大産業に対し、契約書などの書類の山をデジタルで一元化し、さらには保険などの周辺領域にまで連携を広げていくというのは、素晴らしいビジネスですね。
質問ですが、最近は「不動産の電子契約」を謳う他社サービスや独自システムも出てきているかと思います。これらと比較した際、レリーズの最も尖っている「独自性」はどこにあるのでしょうか。
和田氏:ご質問ありがとうございます。
現在、不動産テックで電子契約や顧客管理を謳う他社の多くは、どちらかというと「前工程」にフォーカスしています。つまり、「いかにお客様を獲得し、成約(サイン)に導くか」という営業支援(SaaS)の領域です。
これに対して、私たちレリーズが提供しているのは「後工程」です。契約が決まった後の、宅建業法に基づいたガチガチの業務オペレーション、書類の授受、本人確認、そして周辺の取引(保険やローン)そのものをデジタルで滑らかにしていくという「取引プラットフォーム」としてのポジショニングをとっている点が、他社との決定的な違いになります。
福谷氏:なるほど。獲得ではなく、契約後の複雑な取引オペレーション全体をハックしているわけですね。
もう一つ、家を買うというイベントは、多くの個人(ユーザー)にとって一生に数回しか発生しないため、システムがデジタル化されても「使い方に慣れない」「使い切れない」という課題がユーザー側で発生するのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
和田氏:そうですね。不動産取引はリピート頻度が低いため、「不便でも我慢できてしまう」という側面があるのは事実です。
しかし、マイホームを購入される「一次取得者」のメイン層は現在30代のデジタルネイティブ世代です。彼らはむしろ、「なぜ未だにこんなに大量の紙とハンコが必要なのか」に強いストレス(負)を感じています。
また、実利的なメリットも非常に大きいです。例えば、契約書を電子化するだけで、本来紙の契約書に貼らなければならなかった数万円の「印紙代」がゼロになります。さらに、不動産契約の後に続けてやらなければならない火災保険などの面倒な手続きが、LINEから数タップで終わる。この圧倒的な利便性と金銭的メリットがあるため、ユーザー側の定着や適応において課題を感じることはほとんどなく、非常に喜んで使っていただいています。
福谷氏:確かに、印紙代が数万円浮いて、面倒な手続きがスマホで完結するなら、ユーザーとしても使わない理由がないですね。
現在、利用企業様もかなり増えてきているとのことですが、今後のさらなる拡大に向けた「マーケティング戦略」や「広げ方」についてはどのように考えていらっしゃいますか。
和田氏:大きく2つの戦略を考えています。
1つは、不動産の「共同仲介」という特性を利用したネットワーク効果です。不動産売買では、大手の不動産会社(売主側)が元付として入り、そこに中小の不動産会社(買主側)がお客様を連れてきて共同で取引を行うケースが多々あります。元付である大手デベロッパー様がレリーズを導入してくだされば、共同仲介で取引に関わる多くの中小仲介会社様も自然とレリーズに触れ、システムを利用することになります。この繋がりから、「うちでも導入したい」という問い合わせが増えるネットワーク効果の設計を進めています。
もう1つは、業務効率化のニーズが極めて高い中小の事業者様や、フランチャイズから独立する新規の事業者様へのアプローチです。彼らは大量の契約事務をこなす人員が不足しているため、業務タスクを自動化してくれるレリーズのようなSaaSが非常に強力なソリューションになります。
福谷氏:対面取引の相手側を自然と巻き込んでいくモデルですね。B2Bプラットフォームのインフォマート様などもそのネットワーク効果で爆発的にシェアを伸ばしましたので、非常に筋の良い広げ方だと感じます。
バリューチェーンの構築や、AIを活用した前工程のコミュニケーション連携も含め、今後の展開を楽しみにしています。ありがとうございました。
和田氏:ありがとうございました。