皆さん、改めましてマーブルX株式会社代表取締役の小川翔太郎と申します。本日はよろしくお願いいたします。
弊社は、昨年の5月に創業し、現在2期目を迎えている、東京を拠点に活動している会社です。創業チームのバックグラウンドといたしましては、私自身を含め、もともと総合コンサルティングファームのアクセンチュアに所属していた同僚3人で立ち上げたという特徴があります。
アクセンチュア時代は戦略チーム(Strategy)に所属し、主に大企業のお客様の新規事業立案や中期経営計画の策定などに携わっていました。その中で、私がビジネスサイド全般を担当し、もう一人のメンバーがデザイナーやプロダクトマネージャーといったクリエイティブ領域、そしてもう一人がCTOとしてエンジニアリング領域を担当しています。この「戦略」「クリエイティブ」「エンジニアリング」をカバーするアクセンチュア出身の3名で、強力な推進力を持って事業を展開しております。
私たちが取り組んでいる領域は、「埋蔵コンテンツ」あるいは「潜在コンテンツ」の価値最大化です。
埋蔵コンテンツとは何かというと、企業や地域、自治体の中に眠っているデータやコンテンツの中で、「見る人から見るとものすごい価値があるが、有効活用されずにパソコンや倉庫の奥深くにずっと眠ったままになっているもの」を指します。私たちはこれらを「埋蔵コンテンツ」と名付け、掘り起こして磨き上げ、エンドユーザー向けに高い価値を持つサービスへと昇華させる事業を行っています。
では、具体的にどのようなものが埋蔵コンテンツに該当するのでしょうか。
例えば、ローカル鉄道会社様を例に挙げます。白黒写真の時代から撮影されてきた過去の駅舎の姿や、貴重な車両の画像データなどです。画像自体は無限にあっても、鉄道メンテナンス中の様子や、列車の「行き先方向幕(ヘッドマークや方向幕)」など、一般の人から見れば全く興味がないものでも、熱狂的な鉄道ファンの人から見れば「喉から手が出るほど見たい」というお宝画像が山のように眠っています。
地域や自治体の文脈であれば、伝統のある酒蔵やワイナリーの歴史資料、地域のローカルスポーツチームの記録、あるいは歴史あるお祭りや花火大会の写真などが挙げられます。
私たちが最も重要視しているのは、「世の中の8割や半分以上の大衆に受けるコンテンツである必要は全くない」ということです。むしろ、ニッチで一部の人しか興味を持たない領域にこそ、非常に深い愛着(エンゲージメント)が眠っており、ポテンシャルが極めて大きいコンテンツが存在していると考えています。
民間企業でも、過去に作ったマスコットキャラクターの原画や、出版社の過去の雑誌の表紙画像など、磨けば強力なコンテンツ商品になり得る「潜在的な価値」がいたる所に存在しているのです。
私たちは、こうした眠っている潜在コンテンツを掘り起こし、その魅力をブーストするための仕組みをワンストップで企業や自治体に提供しています。
ファン心理をくすぐり、エンゲージメントを高めるための仕掛けとして、主に以下のようなゲーミフィケーション機能をモジュール化して提供しています。
1. NFTコレクション機能: 貴重なデジタル画像をNFT化し、ユーザーがコレクション・所有できるようにする仕組み。
2. ランダム配布(ガチャ)機能: コレクション収集の体験をゲームのように楽しくするための機能。
3. クイズ・検定機能: 「自分はどれだけこのコンテンツに詳しいのか」を確かめたいというファンの知識欲・所有欲を満たす機構。
4. 位置情報(GPS)連携デジタルマップ: ユーザーの実際の移動やアクションと連動し、「この場所に行けば特別なコレクションが手に入る」という体験を提供する機能。
これらの機能をパッケージ化して提供することで、企業や自治体は自社独自のファンエンゲージメントサービスを、LINEミニアプリなどを活用して極めてスピーディーかつ低コストで立ち上げることが可能になります。
しかし、この領域において非常に重要な点があります。それは「ツール(システム)を導入すればすべて解決するわけではない」ということです。
本質的には、ファンの心を動かす「企画(プランニング)」が優れていること、そしてそれを継続的に打ち出し続けることが不可欠です。しかし、多くの企業や自治体には、そうしたファンビジネスの企画を考えられる専門のプランナーが社内にいないのが実情です。
そのため、私たちは単にツールを提供するSaaSベンダーに留まりません。もともとアクセンチュアのコンサルタントとして培った知見を活かし、初期の企画設計から、クリエイティブ制作、そしてリリース後の運用までワンストップで伴走し、プロデュースするモデルを採用しています。
ここで、実際の導入事例をご紹介します。
静岡県を走るローカル鉄道である大井川鉄道(大鉄)様との取り組みです。私たちは、大鉄様のLINEミニアプリを立ち上げ、眠っていた貴重な車両画像などをNFT化したデジタルコレクション「大鉄ガチャコレクション」をリリースしました。
このガチャを回すためには、実際に駅や沿線のスポットに足を運んで「チェックイン」を行う必要があります。チェックインすることでアプリ内のポイント(マイル)が貯まり、そのポイントを使ってガチャを回し、お目当てのSLなどのレア画像をコレクションする仕組みです。
これにより、例えば「半年に1回しか大井川鉄道に乗りに来なかったファン」に対し、「SLの激レア画像をコンプリートしたいから、毎月駅に足を運ぼう」「特定の駅だけでなく、色々な駅を回ってポイントを集めよう」という強い行動変容(リピート訪問と回遊性向上)を促すことに成功しました。まさに、潜在コンテンツをフックに実世界でのファンエンゲージメントを最大化した事例です。
他には、るるぶ等を発行するJTBパブリッシング様のファンクラブにおいて、過去の雑誌の表紙画像をデジタルカード化してガチャで提供し、ファンのデモグラフィック情報やアンケートデータを取得して顧客理解を深める取り組みを行っています。
また、静岡県掛川市様でのデジタルスタンプラリーや、地域のスポーツチームにおけるライトなファンクラブ構築など、幅広い実績を作っています。
私たちは、地方創生や地域活性化の文脈において、このモデルが非常に強力に機能すると確信しています。地域の魅力を網羅的にパンフレットでアピールしても一般消費者には響きませんが、その地域にあるたった一つの「熱狂的なファンを持つニッチな潜在コンテンツ」を徹底的に磨き上げ、それをフックにして地域に人を呼び込むことができるからです。
私たちが地方創生のアプローチで最も重視しているのが、「ユーザーのストック化(プール化)」です。
現在、日本各地でスタンプラリーなどのイベントが盛んに行われており、開催時には数千人から数万人の参加者が集まります。しかし、イベントが終わるとユーザーとの接点は完全に途切れてしまい、1年後のイベント時にはまた広告を打ってゼロからユーザーを集めるという、非常に連続性のない一過性の施策になってしまっています。
地方自治体の担当者様からも、「まるでお風呂の栓が抜けた状態で、お湯を注ぎ続けているようだ」という深刻な課題感を伺いました。
私たちのソリューションは、まさにその「お風呂の栓を閉める」役割を果たします。イベントなどで獲得したユーザーをLINEミニアプリにしっかりと登録・ストック化し、ガチャやクイズなどの継続的なゲーミフィケーションを通じて熱量を高く維持し続けることで、2回目、3回目の訪問(アクティブ率の維持)へと繋げるアプローチを提供しています。
私たちのマネタイズモデルは、大きく分けてB2BとB2C(決済手数料)の両面があります。
現状の売上の大部分を占めるのは、企業や自治体様からいただく「システム利用料」と、企画・クリエイティブに対する「コンサルティングフィー(伴走支援料)」のB2Bモデルです。
もちろん、アプリ内でNFTコレクションなどのデジタルコンテンツをファンの皆様へ直接販売し、その決済手数料をいただくB2Cモデルも備えています。しかし、決済手数料モデルはユーザー数が大きく膨らまなければボリュームが出にくいため、現段階ではB2Bのサービス利用料とコンサルティングをセットでご提案し、案件単価をしっかりと確保しながら事業としての成功角度を高める戦略をとっています。
私たちのファンエンゲージメントソリューションは、昨年12月に商用リリースしたばかりですが、すでに5〜6件の企業・自治体様と商用契約を結び、サービスが稼働しています。
ここからはビジネスの拡大フェーズであり、より多くのコンテンツホルダーの皆様、地方自治体の皆様と連携を深めていきたいと考えております。協業のご相談やイベント連携など、皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。本日はありがとうございました。
コメンテーター(福谷氏):小川さん、素敵なプレゼンテーションをありがとうございました。埋蔵コンテンツを掘り起こし、ファンの熱量を可視化して地域創生に繋げるという取り組みは、非常に社会的価値も高く、ポテンシャルのあるビジネスだと感じました。
体験としてはいわゆる「デジタルトレーディングカード(トレカ)」のような遊び方に近しい印象を受けましたが、その認識で合っていますでしょうか。
小川氏:ご指摘の通りです。ユーザー様から見たときの体験としては、ポケモンカードなどのトレーディングカードをコレクションして楽しむ感覚に極めて近いと思います。
福谷氏:ありがとうございます。トレカ市場自体が今非常に拡大していますので、それを「観光」や「地方創生」に特化させたサービスという捉え方でよろしいですか。
小川氏:観光に特化させるかどうかは現在も模索しているところですが、本質的な機能としては、デジタル上の画像コンテンツなどをトレカのように集めて楽しめる体験として提供することですので、おっしゃる通りです。
福谷氏:なるほど。このモデルが観光特化でいくのか、あるいはより幅広いジャンル(エンタメや他の産業)に広げていくのかで、今後の戦略も大きく変わってきそうで非常に楽しみです。
ちなみに、こうして眠っているニッチなコンテンツ(例えば鉄道ファン向けなど)のサービスを、ファンの方々はどうやって知るのでしょうか。ユーザー獲得のきっかけについて教えてください。
小川氏:ユーザーの最初の認知や流入に関しては、基本的には導入元である企業様やコンテンツホルダー様側のチャネルを利用しています。
大井川鉄道様の事例でいえば、鉄道会社様が持っている公式SNSでの告知や、実際の駅舎や車内での案内、またはイベント開催時の周知など、オフラインと既存チャネルを駆使してファンにアプローチしています。
福谷氏:既存の濃いファンに対して、最初の接点をしっかり作ってもらうわけですね。
小川氏:はい。私たちの最大の強みは、「知ってもらった後」の体験にあります。
先ほど申し上げた「スタンプラリーの一過性問題」に対して、私たちは一度流入したユーザーをしっかりとLINEミニアプリ上でプールし、ストック化します。そして、翌月もその次の月もガチャや新しいコレクションで楽しんでもらうことでアクティブ率を高く維持する。この「熱量の継続化」と「ストック化」こそが、私たちが提供する最も強力な価値です。
福谷氏:なるほど。お風呂の栓を閉めて、熱量を逃がさないための仕組みですね。
このアプリ内のコンテンツ更新や入稿作業は、コンテンツの提供者側(鉄道会社や自治体)が自ら簡単に行えるシステムになっているのでしょうか。
小川氏:はい。最もシンプルかつ低コストで運用する場合は、企業様側で企画を考えていただき、指定の入稿シートに入力していただいたデータをシステムに機械的にアップロードする形をとっています。
ただし、サービスの成功確率を最大限に高めるために、私たちが企画のプランニングから制作まで伴走するコンサルティングオプションをあわせてご提案しています。これが私たちのB2B事業における客単価アップにも繋がっています。
福谷氏:ツールを渡して終わりではなく、アクセンチュア出身という強みを活かした伴走コンサルティングをセットにすることで、顧客の成功と自社のビジネスモデルの双方を成り立たせているのですね。
昨年12月に商用リリースしたばかりで、すでに5〜6件の契約実績が出ているとのことですので、今後のさらなる拡大と事業計画の進展を期待しております。本日はありがとうございました。
小川氏:ありがとうございました。