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📊 Event Report

【ナオライ株式会社】日本酒の弱点を克服する「低温蒸留」技術。酒蔵の廃業危機を救い、能登・全国の稲作を再生する新ジャンル「常駐」

VENTURE PITCH ONLINE
2025/10/02
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零細酒蔵の廃業危機と、日本酒が抱える海外輸出の「アキレス腱」

皆さん、よろしくお願いします。ナオライ株式会社代表取締役の三宅紘一郎と申します。

弊社が拠点を置く広島県は、日本でも有数の「酒どころ」として知られています。しかし現在、かつて全国に4000箇所あった酒蔵が次々と廃業しており、この素晴らしい伝統文化が失われつつあります。

日本には現在、約1200社の酒蔵が存在しますが、その実態は非常にドライです。世界的に有名で大きく売れているのは上位約50社に過ぎず、残る1000社以上の酒蔵は、年商2000万円から2億円程度の極めて規模の小さい「零細酒蔵」です。このままの産業構造が続けば、50年後には日本の酒蔵は300社程度にまで減少し、地域の酒文化は消滅してしまうというシビアな未来が容易に予想されます。

私たちは、この伝統的な日本酒業界に「新しいビジネスモデルを1つ追加する」ことで、業界そのものを再生したいと考えています。

日本酒が海外へ進出する上で、非常に大きなデメリット(弱み)が2つあります。それは「新酒が最も価値が高く、時間とともに劣化する点(賞味期限の概念)」と、保管や輸送において「冷蔵管理(コールドチェーン)が必須である点」です。日本酒は繊細な「生もの」のような存在であるため、海外での流通において品質劣化リスクが高く、これが輸出拡大の大きな障壁(アキレス腱)となっていました。

私たちは、この日本酒の弱点を克服し、かつ世界で急成長している「蒸留酒(スピリッツ)市場」へ展開するための革新的な特許技術を開発しました。それが「低温蒸留」技術です。

特許技術「低温蒸留」が実現する、香りは日本酒のまま常温熟成する「常駐」

一般的な蒸留は、お酒を高温で加熱してアルコールを抽出します。しかしこれでは、日本酒が持つ吟醸香や米の芳醇な香りといった繊細なアロマがすべて熱で破壊されてしまいます。

弊社の特許技術である低温蒸留は、真空状態を作り出すことで、わずか「39度以下」という極めて低い温度で蒸留を行います。これにより、日本酒特有の極めて繊細な香りを一切壊すことなく、アルコールだけを抽出することに成功しました。

こうして誕生したのが、日本酒でも焼酎でもウイスキーでもない、全く新しいお酒のカテゴリー「常駐(じょうちゅう)」です。

常駐は、香りは華やかな日本酒のまま、アルコール度数の高いクリアなスピリッツとして仕上げられています。

常駐にすることで、日本酒業界に劇的なブレイクスルーをもたらします。

まず、蒸留酒となるため「常温での長期保管」が可能になり、冷蔵輸送の手間や劣化リスクが完全にゼロになります。さらに、日本酒とは逆に「置く(寝かせる)ほどに価値が高まる『長期熟成(ヴィンテージ化)』」が可能になりました。

木樽に詰めて熟成させた常駐は、まるでジャパニーズウイスキーのような琥珀色の輝きと芳醇な味わいへと変化します。現在では、海外のファンや企業経営者の方々が「樽オーナー」として私たちの樽を購入してくださるなど、高付加価値なファンビジネスが成立しています。

また、健康面でも「糖分がほぼゼロ」であるため、糖質制限をされているけれど日本酒の華やかな香りが好きというお客様からも非常に高い支持をいただいています。

さらに、私たちは持続可能なエコシステムとして、蒸留の過程で生まれる「副産物(アミノ酸や発酵エキス)」を無駄にしません。これらを活用し、お酒の飲めないお子様や高齢者向けの「発酵調味料」や、バイオテクノロジーを用いた「健康食品」として商品化を進めています。シュリンクする一方だった日本酒市場から、世界で伸びる「蒸留酒市場」と「ヘルスケア(バイオ)市場」へと同時に面を広げていくモデルです。

広島から能登半島へ。ローカルゼブラとして47都道府県への展開

私たちのモデルの最大の特徴は、地域の稲作農家の所得を劇的に向上させ、地方創生に直結する点にあります。

酒蔵から日本酒をしっかりと買い取り、自社の蒸留所で高付加価値な「常駐」やバイオ調味料に変えていく。この仕組みは、1拠点あたりわずか「4名」のスタッフがいれば十分に蒸留所を回すことができるように設計されています。

いわば、全国どこでも再現可能な「フランチャイズ」のような形で横展開できるパッケージとなっています。

実際、私たちは広島で培ったこの「常駐モデル」を、今年、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県能登地域へと展開いたしました。

震災後、被災地の復興を支援する北陸復興ファンド(インパクト投資)からの出資やサポートをいただき、無事に能登での蒸留所「能登蒸留所」を開設・稼働させることができました。広島の日本酒からは広島の常駐を、能登の日本酒からは能登の常駐を造ることで、地元の酒文化と稲作を復興させる象徴的なプロジェクトとなっています。

すでに、新潟県長岡市、長野県善光寺、福岡県八女市での展開もほぼ確定しており、今後は「目指せ47都道府県」を合言葉に、全国へこの仕組みを広げてまいります。

さらに、稲作が盛んな海外の地域(台湾、バスク、ハワイ、ハノイなど)に対しても、この常駐モデル(お米を酒にし、常駐に変え、副産物で健康食品を造る一連のシステム)そのものを輸出する計画を進めています。

これまで、私たちは広島県をはじめ多くの企業の皆様に支えていただき、累計で約2億円の資金調達を実施してきました。また、日本郵政様から2年間の出向メンバーを受け入れて経営体制を強化するなど、文化づくりに向けた基盤が整いつつあります。

「がっちりマンデー」のプレゼン大会で最優秀賞をいただき、獺祭の旭酒造・桜井会長の前でも事業を発表する機会をいただきました。

私たちのビジョンは、大都市を中心とした急激な資本成長を目指すユニコーンではなく、地域に深く根ざし、10年20年と持続的に酒文化とコミュニティを支え続ける「ローカルゼブラ」として全国・世界へ羽ばたくことです。この日本の伝統文化をアップデートする挑戦に、是非ご賛画ください。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(飛山氏):三宅さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。私自身、ここ5年ほど日本酒にハマっておりまして、旅先で色々な日本酒を買ってきては夫婦で飲み比べを楽しんでいます。

ピッチの中で登場した「常駐(じょうちゅう)」という新しいお酒と、それを生み出す「低温蒸留」という技術が非常に気になりました。一般的な他のお酒と比べて、味や香りはどのような違いがあるのでしょうか。また、低温蒸留をすることで具体的にどうお酒が変化するのか、もう少し詳しく教えていただけますか。

三宅氏:ご質問ありがとうございます。

従来の一般的な「蒸留」は、高温でお酒を沸騰させてアルコールを抽出するため、日本酒が持つフルーティーな吟醸香(りんごや洋梨のような華やかな香り)や、お米の非常に繊細な甘い香りが、熱によってすべて飛んでしまいます。

これに対して、私たちの「低温蒸留」は、装置内を真空状態にすることで沸点を極限まで下げ、わずか「39度以下」という、お風呂の温度のようなぬるい温度で蒸留を行います。これにより、日本酒本来の華やかで優しい香りをそっくりそのまま液体に残し、アルコールだけを取り出すことができます。

糖分がカットされているため、口当たりはウイスキーやジンに近いキレのあるドライなスピリッツですが、口に含んだ瞬間にフワッと甘い日本酒の吟醸香が広がる。これが、米焼酎とも日本酒とも全く異なる、私たちが特許を持つ「常駐」の新しい味わいと香りです。

飛山氏:なるほど。日本酒ならではのあの甘く優しい香りを残したまま、糖質ゼロで常温保存ができるスピリッツに変えるわけですね。

もう一つ、海外市場への展開についてお聞きしたいです。先ほど「獺祭」の桜井会長のお話も出ましたが、現在日本酒は海外でも非常に注目を集めています。ここからさらに日本の酒文化を世界へ広げていくためのヒントや、ナオライとしての戦略があれば教えてください。

三宅氏:まさに、日本酒が海外に進出する際の最大の障壁が、先ほど申し上げた「新酒であることの価値」と「冷蔵(コールドチェーン)の必要性」です。

ワインのように古くなるほど価値が上がるヴィンテージの概念が日本酒には乏しく、かつデリケートなため常温で放置するとすぐに劣化して酸っぱくなってしまいます。海外の流通網において、すべての経路で完璧な冷蔵車を走らせるのはコスト面でも非常に難しいのが実態です。

私たちの常駐モデルは、アルコール度数を高めて蒸留酒にすることで、常温で何年置いても劣化しないどころか、ワインやウイスキーのように「置くほどに美味しくなり、ヴィンテージとしての価値が高まる」お酒に変えることができます。

これにより、海外のレストランやバーに常温で気軽に置いておくことができますし、時間の経過自体を価値に変えて「デジタルで所有権を管理・取引する(例えば熟成中の樽の権利をNFT化してグローバルに取引する)」といった、新しい資産価値としての展開も可能になります。日本酒業界が海外展開で抱えていた弱みを、テクノロジーで完全に補うことが私たちの海外戦略のコアルールです。

飛山氏:なるほど。弱点である「劣化しやすさ」を「ヴィンテージとしての熟成価値」に変えて、海外の蒸留酒市場へシームレスに侵入していくわけですね。

樽熟成を重ねることでウイスキーのように変化していくというのも、お酒好きとしては非常に惹かれます。広島の店舗や各地の蒸留所で、是非この「常駐」を見つけて飲んでみたいと思います。今後の全国・世界展開を期待しております。ありがとうございました。

三宅氏:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。