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📊 Event Report

【プラチナバイオ株式会社】ゲノム編集×バイオDXで食のバリアフリーを実現。世界初の「アレルギー低減卵」と無限の可能性を秘めたバイオものづくり

VENTURE PITCH ONLINE
2025/10/02
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キユーピー提携と累計6.3億円調達。広島大学発ディープテックが挑むバイオテクノロジーの社会実装

皆さん、よろしくお願いいたします。プラチナバイオ株式会社代表取締役の奥原啓輔と申します。

私たちは「バイオテクノロジーで未来を開く」という強いビジョンのもと、広島大学発のスタートアップとして2019年に創業いたしました。創業以来、事業会社様やCVC様を中心に、これまでに累計で6.3億円の資金調達を実施しております。

最近の大きなトピックとしては、マヨネーズなどで知られるキユーピー株式会社様と資本業務提携を発表させていただきました。その他にも、ヤンマー様や常石造船グループ様、さらにはスシローを運営する株式会社フード&ライフカンパニー様など、バイオテクノロジーや生物資源に深く関わる多様な事業会社の方々にご出資をいただき、強力なサポーターとして支えていただいています。

現在、メンバーは43名体制となり、最先端の学術・科学技術の基盤を国内最高峰のアカデミアが支えています。ゲノム編集のトップランナーである山本隆教授、バイオDXおよびバイオインフォマティクスの第一人者である坊野秀政教授、そして卵アレルギーを低減する卵の共同開発者である堀内教授といった強力な研究陣が、私たちの科学技術顧問としてバックアップしてくださっています。

私たちのコア事業は、生物が持つ様々な機能や遺伝情報をデータ化する「バイオDX(データ解析)」と、その解析結果をもとに特定の機能を発現させたり、ゲノム編集技術を用いて遺伝情報を書き換えていく技術(育種・デザイン)です。微生物から植物、動物に至るまで、産業で活用されるあらゆる生物の機能をデザインし、社会課題を解決していくプラットフォームを展開しています。

卵アレルギーの主因を狙い撃ち。キユーピーとの共同研究で開発した世界初の「アレルギー低減卵」

私たちが開発した最も象徴的なプロダクトが、卵アレルギーを持つ方でも安心して食べられる「アレルギー低減卵(オボムコイド極小卵)」です。これは、ゲノム編集を用いた卵のイノベーションとしては世界初の試みとなります。

キユーピー様と堀内教授が10年以上の歳月をかけて共同研究を進めて完成させたもので、卵アレルギーを引き起こす最大の原因物質である特定のタンパク質「オボムコイド」を、ゲノム編集技術によって完全に失くす(ノックアウトする)ことに成功した卵です。

アレルギー全体の約3分の1を占め、食物アレルギーの原因として日本国内で不動のワースト1位となっているのが「鶏卵」です。そのアレルギー物質(アレルゲン)の中でも、オボムコイドは熱や酸に極めて強いという厄介な特性を持っています。通常の卵アレルゲンは熱を通せば効果を失う(失活する)ものが多いのですが、オボムコイドだけはしっかりと加熱してもアレルギーを引き起こす力が残るため、これまで多くの患者様や食品メーカーが頭を悩ませてきました。

私たちが開発したアレルギー低減卵は、熱に強いオボムコイド自体を含んでいません。そのため、この卵を加熱調理すれば、その他の熱に弱いアレルゲンはすべて失活し、重篤な卵アレルギーをお持ちのお子様や患者様でも、安心して本物の卵を使った料理を口にすることができるようになります。いわば、小麦における「グルテンフリー」のような変革を卵の領域で実現するものです。

現在、私たちは農林水産省の「SBIR3事業(スタートアップ向け研究開発支援プログラム)」に採択され、4年間で13億円という大規模な補助金をいただき、この社会実装を急速に進めています。生産規模の拡大と並行して、食物アレルギー対応のトップランナーである相模原病院の海老沢先生の協力を得て、世界初となる臨床研究を進めています。

先日もNHKで特集していただき、卵アレルギーを持つ3歳の男の子が、臨床研究の中でアレルギー低減卵のパウダーを口にし、一切のアレルギー反応を起こさずに笑顔を見せてくれたシーンが全国に報道されました。「子供に本物の卵を食べさせてあげたい」「いつか同じ食卓を囲んで、一緒においしいねと言い合いたい」という、当事者やご家族の切実な願いに応えるプロダクトとして、非常に大きな期待と反響をいただいています。

目指すは「Egg for All」。代替卵を超えて世界中の卵を置き換えるグローバル展開

私たちの野望は、このアレルギー低減卵を日本国内だけに留めることではありません。

現在、世界中で「プラントベース(植物性)」の代替卵、例えばアメリカで人気を集めている「JUST Egg(ジャストエッグ)」のような液体商品が市場に出回っています。しかし、植物性代替卵の最大の課題は、本物の卵に比べて「おいしくない」という点にあります。私たちは、本物の鶏卵でありながらアレルゲンだけを除去した卵を提供することで、この大食品代替市場を本物の卵の味で置き換えていく最初のステップを描いています。

そしてその先には、ケーキやマヨネーズなどの加工食品に使われる業務用卵を含めた、世界中のすべての卵をこのアレルギー低減卵へとシフトさせていく計画です。アレルギーがある人もない人も、みんなが同じ本物の卵を楽しめる「Egg for All(みんなの卵)」というコンセプトを掲げています。

すでにグローバル展開の準備は始まっており、アメリカでの市場調査や、フードテックの先進地であるシンガポールでの実証、さらには世界最大の食料庫であるインドの現地大手種苗会社との連携を仕込んでいます。インドでアレルギー低減の取り組みを定着させ、そこからアフリカなど食料問題とアレルギー課題が混在する巨大なグローバル市場へと展開していく計画です。

また、私たちは卵だけでなく、このゲノム編集・バイオDXプラットフォームを活用した多様なプロダクトラインを持っています。

例えば、創薬スタートアップ向けのゲノム編集細胞の提供、水産資源の安定供給に向けた「ゲノム編集を用いない海面養殖用の新しい魚類飼料開発」、さらにカーボンリサイクル領域での「微細藻類のCO2吸収能力向上」、そして「バイオものづくり」による微生物を用いた有用物質の生産など、多岐にわたるプロジェクトを大手企業様や研究機関と進めています。

日本を代表するディープテックとして、最先端の科学技術をグローバルに社会実装し、食と環境の課題を解決してまいります。私たちの挑戦を共に加速させてくださる投資家・パートナー企業の皆様、ぜひお力をお貸しください。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(富山氏):奥原さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。ゲノム編集とバイオDXという、一見すると専門的で難しい分野のお話でしたが、アレルギー低減卵という極めて具体的で人々に直結する事例を出していただいたことで、テクノロジーがもたらす社会価値が非常にクリアに理解できました。

質問ですが、卵のアレルギー低減卵プロジェクトはかなり開発が進んでいる印象を受けました。それに続くプロダクトラインの中で、次に最も社会実装やマネタイズ(製品化)が早く進みそうな領域や具体的な計画があれば教えていただけますでしょうか。

奥原氏:ご質問ありがとうございます。

卵に続く領域として、最も社会実装とマネタイズが早く進んでいるのが「微生物や細胞を用いたバイオものづくり」の領域です。

卵や植物といったオープンスペースで栽培・飼育する生物のゲノム編集には厳しい国の規制や社会的な受容性のハードルがありますが、微生物や細胞をタンクの中で培養する「閉鎖系」のプロセスであれば、ゲノム編集の技術を極めて自由に、かつ迅速に活用することができます。

具体的には、例えば化粧品の原料となる「ヒアルロン酸」を生産する微生物の遺伝子をデザインし、通常の何倍もの生産効率に高めるプロジェクトが進行しています。また、バイオ医薬品の主原料となる抗体を生産する「CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)」の生産効率を高める研究など、化粧品メーカー様や医薬品原料メーカー様といった、すでに実ビジネスを展開されているB2B企業様との協業が非常に早く形になっており、売上貢献としても近い将来に実現する領域となっています。

富山氏:なるほど。規制のハードルが低い閉鎖系のタンクで、化粧品原料や医薬品の生産性を極限まで高めていくわけですね。B2Bのマネタイズの道筋が非常によく見えました。

もう一つ、私自身の非常に身近なビジネスの課題としての相談なのですが、現在気候変動(温暖化)によって、これまで輸入に頼っていた熱帯地方のコーヒーやスパイスといった作物の調達が不安定化しています。これらを「日本の温暖化した地域(例えば沖縄や石垣島など)で国産化・栽培できないか」というプロジェクトを自社で進めています。

こういった「気候変動に対応するための作物の品種改良や育種」といったリクエストに対しても、プラチナバイオの技術プラットフォームで支援することは可能なのでしょうか。もし可能であれば、すぐにでも投資やパートナーシップを検討したい企業は多いと思います。

奥原氏:まさにその領域こそ、私たちのバイオDXとゲノム編集が最も強みを発揮するテーマです。

地球温暖化に伴って「温度が上がっても耐えられるように作物を遺伝子レベルでデザインする(耐暑性育種)」や、「これまで栽培できなかった新しい土壌や気候の地域に合わせて作物の機能を書き換えていく」といった取り組みは、私たちの基幹技術そのものです。

非常にユニークな例をご紹介しますと、現在私たちはサウジアラビアのような過酷な砂漠地帯で、日本の芝生をゲノム編集やデータ解析によって最適化し、砂漠そのものを緑化してサッカー場を造るという巨大な砂漠緑化プロジェクトも手掛けています。

ですので、コーヒーやスパイスの国産化、あるいは温暖化に負けない新しいブランド作物の育種といったご要望に対しても、どういった遺伝的アプローチが最適かをデータ解析から品種開発までワンストップでサポートできます。ぜひ、具体的なお話を進めさせていただければと思います。

富山氏:砂漠緑化まで手掛けられているとは、発想と技術のスケールが本当に無限大ですね。気候変動への対応は食品・農業関連企業にとって喫緊の課題ですので、ぜひこの後、具体的なご紹介とディスカッションの場を設定させてください。今後の社会実装を非常に楽しみにしています。ありがとうございました。

奥原氏:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。