皆さん、よろしくお願いいたします。PURMX Therapeutics(パーマックス・セラピューティクス)代表取締役の田原栄俊と申します。
弊社は、がん細胞が無秩序に増殖を繰り返す中で、既存の治療法が効かない「難治性がん」を救うための革新的な治療薬を開発しているバイオテック企業です。2021年1月に設立され、これまで大阪大学ベンチャーキャピタル様や横浜キャピタル様、K-HAUSイノベーション様など、先進医療やディープテックを支援する多くのVC・投資家の皆様からご出資をいただき開発を進めてまいりました。
私たちの価値提案は、がん治療において多くの患者様が直面する「抗がん剤への薬剤耐性」「生活の質(QOL)を著しく損なう強い副作用・毒性」そして「がんが一時的に縮小・消失しても再び現れる再発や転移」という、がん治療におけるあらゆる困難な障壁に対して、新しいメカニズムでブレイクスルーをもたらすことです。
がんが難治化する最大の原因は、がん細胞が私たちの体の中で「無限に増殖し続ける能力」を持ち、それによって抗がん剤への耐性を必然的に獲得してしまう点にあります。これに対する私たちのソリューションは、がん細胞の無限の寿命を断ち切る治療薬です。
具体的には、体内の極小分子である「マイクロRNA」を用い、がん細胞に「細胞老化」のスイッチを入れます。私たちはこれを「エイジングスイッチ(老化スイッチ)」と呼んでおり、このスイッチが押されることによって、がん細胞は二度と増殖することができなくなり、最終的に死滅へと誘導されます。
マイクロRNAについて少しご説明します。ご存じの方も多いかもしれませんが、マイクロRNAは2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞した、今世界中で最も注目を集めている生体分子です。私たちの体の中に約2,600種類ほど存在しており、タンパク質自体を作ることはありませんが、遺伝子(メッセンジャーRNA)の働きを絶妙に調整する「微調整(ファインチューニング)」の役割を担っています。
一般的な抗がん剤が一つの遺伝子だけをピンポイントで攻撃するのに対し、マイクロRNAは関連する複数の遺伝子群に同時にアプローチします。そのため、がん細胞の一部に遺伝子変異が起きて薬から逃れようとしても、他の経路も同時に阻害されているため、極めて「薬剤耐性ができにくい」という強力な強みを持っています。
私たちのファースト・パイプラインである「MIRX002」は、このマイクロRNA(具体的にはmiR-3140)と、自社開発のキャリアペプチド「A6K」を組み合わせた局所投与型の核酸医薬です。
この薬がどのように作用するのか、がん細胞を死滅させるメカニズムは非常に画期的です。MIRX002は、がん細胞の生存に不可欠な「SLC7A11」という特定の分子を狙い撃ちして阻害します。この分子が阻害されると、がん細胞の内部に「ROS(活性酸素)」が急激に蓄積し、がん細胞が「フェロトーシス」という鉄依存性の細胞死(アポトーシスとは異なる新しい死滅ルート)によって破壊されます。このターゲット分子(SLC7A11)は、大手の製薬会社が共同で開発コンソーシアムを立ち上げるほど注目している、極めて強力ながん治療ターゲットです。
すでに動物モデル(マウス)を用いた実験では驚異的な効果が確認されています。アスベストの吸入が主因で発症する極めて難治性の「悪性胸膜中皮腫」を再現したマウスに対し、わずか3日間(3回)投与しただけで、その後追加投与を一切行わなかったにもかかわらず、がんは縮小・消失し続け、生存率は65%という画期的な延命・治療効果を実証しました。
現在、人間に対する安全性と有効性を確かめるための第I/II相臨床試験(01および02試験)を進めており、先日無事に試験の投与フェーズを終了し、現在はデータの解析待ちという非常にエキサイティングなステージにあります。
さらに、私たちは局所投与だけでなく、進行したがんや転移したがんにもアプローチできる「全身投与型」のパイプライン「MIRX006」の開発も並行して進めており、間もなく非臨床試験に入る段階です。
私たちの開発スピードはグローバル基準です。米国市場への展開に向けて、すでに米国食品医薬品局(FDA)とのプレINDミーティング(臨床試験申請前の事前協議)を完了しており、FDAから悪性胸膜中皮腫における「希少疾病用医薬品指定(オーファンドラッグ指定)」も獲得しています。
これにより、グローバルでの臨床試験を開始するための準備は万全であり、資金調達が完了し次第、速やかに米国をはじめとするグローバルでの臨床試験(バスケット試験)へ突入する体制が整っています。
私たちのコマーシャル戦略は、まずは希少がんである悪性胸膜中皮腫で早期の薬事承認を狙いつつ、患者数が多く市場の大きい「頭頸部がん」や「肺がん」などへと適応症を順次拡大していく方針です。
頭頸部がんにおいては、現在国内で臨床試験を進めており、首の腫瘍に対して手術前にMIRX002を直接局所投与し、その後の手術で切除されたがん組織を分析するという手法をとっています。これにより、薬が実際にがん細胞に届いて狙い通りにエイジングスイッチを押し、フェロトーシスを誘導できているかをダイレクトに実証することが可能です。すでに最初の症例での解析結果から非常に興味深いポジティブなデータが得られており、私たちの技術を大手製薬会社(メガファーマ)へライセンスアウトするための強力なエビデンス(検証材料)となっています。
今後の展望として、MIRX002とオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤(ICI)」を併用することで、がんの免疫逃避機構を破壊し、治療効果を何倍にも高める併用療法の開発も進めています。
この革新的なマイクロRNA治療薬を世界中の患者様へ届けるために、私たちは現在、シリーズBとして3,000万ドル(約45億円)のグローバル資金調達を開始しています。調達期間は2025年度内の1年以内を想定しており、国内外の有力VCからの出資と並行して、私たちの核酸医薬を体内の標的に届けるために必須となる「DDS(ドラッグデリバリーシステム、脂質ナノ粒子など)」の先端技術を持つ事業会社様との資本業務提携(現在2社ほどと協議中)を組み合わせた、ハイブリッドな資金調達を進めています。
私たちの開発チームは、がん領域で30年以上にわたるグローバル臨床開発の経験を持つ高橋をはじめ、規制対応のプロフェッショナルである安本、そしてグローバルな財務・資金調達を牽引するCFOなど、医薬品の創出からグローバル治験の成功までを一気通貫で成し遂げられる最強のメンバーで構成されています。
この世界初のがん細胞「老化スイッチ」技術によって、治療法がなく絶望している難治性がんの患者様とそのご家族に、再び希望と笑顔を届けるために全力で邁進してまいります。ご支援とご提携のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
コメンテーター(富山氏):田原さん、非常に心強く、そして医療の未来を変える壮大なピッチをありがとうございました。がん細胞自体を「老化」させて二度と増殖できなくし、さらにフェロトーシスという新しい機序で自滅させるというアプローチは、がん治療のパラダイムシフトになると強く感じます。
質問ですが、開発中のパイプラインについて、悪性胸膜中皮腫に加えて「頭頸部がん」を早期の主要ターゲットとして優先順位を上げられた理由を教えてください。患者数や市場規模だけで言えば胃がんや肺がんなどの方が大きいと思いますが、なぜ頭頸部がんで直接注入するアプローチを選ばれたのでしょうか。
田原氏:ご質問ありがとうございます。
最初の標的として、悪性胸膜中皮腫というアスベストによる希少がんを選んだのは、既存の治療薬がほとんどなく、社会的課題の解決として最もインパクトが大きいからです。
しかし、悪性胸膜中皮腫は肺の周り(胸腔内)に薬を注入するため、外からはがんの縮小や内部で何が起きているかという「薬の作用」を肉眼や直接的なサンプリングで確認することができません。CTやMRIで全体の大きさを追うことしかできず、製薬会社に対して「このメカニズムでがん細胞が本当に死んでいる」という直接的なエビデンスを示すのが難しいという課題がありました。
これに対して、頭頸部がんは首や顔周りのがんであり、外からがん細胞へ直接注射で薬を注入することが可能です。さらに、この臨床試験では「手術でがんを切除する直前に薬を投与する」というプロトコルを採用しています。これにより、手術で取り出した本物の人間のがん組織を回収し、「薬が分子レベルで浸透し、狙ったSLC7A11を阻害してROSを発生させ、がんを老化・死滅させているか」を直接解析し、可視化することができます。
現在、最初の症例の解析が終わり、まさに私たちの仮説通りの極めてポジティブなデータが得られています。この「薬が実際に効いている証拠(PoC)」を視覚的・科学的なデータとして製薬企業に示すことができれば、ライセンスアウト(提携)の交渉力を劇的に高めることができる。これが、頭頸部がんの臨床試験の優先順位を上げた最大の戦略的理由です。
富山氏:なるほど。薬効のメカニズムを人間の組織で直接実証し、そのデータを大手製薬会社に見せることで、早期の巨額ライセンスアウトを引き出すための最大の武器にするわけですね。非常に緻密で納得感のある戦略です。私の年齢になると、がんの脅威は非常に身近ですので、早くこの薬が世に出てほしいと心から願っています。
もう一点、今回の3,000万ドル(約45億円)というシードBの資金調達について、期間と出資者のイメージを教えてください。どのような企業やVCを想定されていますか。
田原氏:資金調達のスケジュールにつきましては、2025年の2月・3月頃から本格的に開始し、そこから1年以内(年度内)でのクローズを目指しています。
出資を想定しているパートナーは、大きく分けてグローバルなバイオ専門VCと、核酸医薬に必要なDDS(ドラッグデリバリーシステム)やLNP(脂質ナノ粒子)の技術・プラットフォームを保有している化学・製薬系の事業会社様です。
核酸医薬は素晴らしい薬効分子があっても、それを壊さずにがん細胞まで届けるDDSの技術(デリバリー技術)がなければ成り立ちません。現在、すでにそうした優れたDDS技術を持つ大手事業会社様2社ほどと、資本提携と技術ライセンスの共同開発に向けた具体的な協議を進めております。こうした事業会社とのアライアンスと、VCからのエクイティ調達をハイブリッドで組み合わせることで、3,000万ドルを早期に確保し、米国でのFDA治験を一気に進めたいと考えております。
富山氏:事業会社とのDDSアライアンスとVCのハイブリッド調達、こちらも理に適った強固な計画ですね。グローバルで勝負できる最強のメンバーが揃っているチームだと感じますので、ぜひこの革新的な薬を一日も早く世界のがん患者へ届けていただけるよう、全力で応援しております。ありがとうございました。
田原氏:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。