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📊 Event Report

【株式会社Quick】AI×タクシー搬送で救急医療の崩壊を防ぐ。現役医学生が創る、119番トリアージと搬送最適化の新たな医療インフラ

VENTURE PITCH ONLINE
2025/09/18
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2台に1台が軽症。崩壊寸前の日本の救急医療を医師・医学生の専門性で救う

皆さん、よろしくお願いいたします。株式会社Quick代表取締役の武田淳宏と申します。

私は現在、筑波大学医学部の6年生であり、今年度医師免許を取得する予定です。日々、大学病院での実習や現場を回る中で、救急医療現場のすさまじい逼迫ぶりを目の当たりにしてきました。「1人でも多くの命を救いたい」という極めてシンプルな、しかし切実な思いから、昨年の10月にこの株式会社Quickを起業いたしました。

日本の救急医療は、現在まさに限界を迎えています。

年々、救急車の出動件数は増え続けており、それに伴って「病院収容時間(通報から病院で医師の治療を受けるまでの時間)」が激増しています。約20年前であれば、電話をしてから6分で救急車が到着し、30分以内には医師の治療が受けられていました。しかし現在では、救急車が来るまでに平均10分、そこから病院に収容されるまでに45分もの時間がかかっています。このままのトレンドが続けば、2035年には収容時間が55分にまで達すると言われており、一刻を争う重症患者の命が救えなくなる危機が目前に迫っています。

この深刻な逼迫を引き起こしている最大の要因が、「軽症患者の通報」です。

現在、日本全国で走っている救急車のうち、実に「2台に1台(約50%)」が、入院の必要がない軽症の患者様を乗せて走っています。その通報内容の実態は、「昨日から咳が止まらない」「コンタクトレンズが外れない」といった、およそ緊急性があるとは言えないものが多数を占めています。しかも、救急車を1回動かすためには、人件費や機材費を含めて約4.5万円という多額の税金が消費されています。これが自治体の財政にとっても極めて大きな負担となっています。

私たちは、この119番通報の段階に「医療AI」と「遠隔医師相談」による選別(トリアージ)を導入し、緊急性の低い軽症患者様をタクシー搬送へとバイパスさせる新しい救急医療インフラを提案しています。

特有データでファインチューニングした多重AI。つくば市で実証を進める119番トリアージシステム

私たちの構築しているシステムは、119番通報が入った際、通信指令員が使用するダッシュボードに組み込まれるAIプロダクトです。

電話口の会話内容をリアルタイムで解析し、「胸が痛い」「いつからか」「意識はあるか」といった状況に応じて、通信指令員が次に尋ねるべき推奨の質問を画面上にレコメンドします。さらに、対話データから患者様の「緊急度・重症度」をAIが瞬時に判定し、会話の要約までを自動生成します。

本システムはすでに基本特許を出願済みであり、機微な医療情報を安全に取り扱うため、OpenAI社と医療情報取扱に関する直接の業務委託契約を締結しています。

技術的な優位性として、私たちのAIシステムは単一のLLMに依存していません。GPTモデルに加え、Gemini、Claudeの3大モデルを掛け合わせてベースエンジンを構築しており、つくば市消防本部から提供された実際の消防・救急データを用いてファインチューニングやRAG(検索拡張生成)による高度なカスタマイズを行っています。2025年3月の救急医療学会で発表された従来のトリアージ手法と比較しても、AIの判定精度を示す指標(AUC)が「40%以上」も向上していることを確認しており、実用レベルでの極めて高い精度を誇っています。

このAI判定によって「軽症・緊急性なし」とスクリーニングされた後は、システムに常駐する遠隔医師のコールセンターに直接通話が転送され、医師が最終的な軽症判定とトリアージを行います。

ここで本当に緊急性がないと医師が最終判断した場合、患者様に「救急車ではなく、タクシーでの搬送をご希望されますか」と意思確認を行います。ご承諾いただけた場合は、システムとAPI連携している地元のタクシー会社の車両と、近隣の最適なクリニックを自動でマッチングし、予約手配を速やかに行います。

自治体予算を劇的に削減。年間1.6万人の救命と県単位で2.6億円のレベニューシェアモデル

このシステムを導入し、救急車で運ばれている軽症患者のわずか「20%」をタクシー搬送へ代替することができれば、救急体制全体に劇的なブレイクスルーをもたらすことができます。

まず、本当に救急車を必要とする重症患者様の病院収容時間を、平均で「10分短縮」することが可能になります。この10分の短縮は、日本全国規模で換算すると、年間で実に「1.6万人」の命を新たに救うことができる救命効果に匹敵します。

さらに、出動コストの面でも、これまで1回出動するたびに4.5万円かかっていた自治体の税金コストが、タクシー搬送によってわずか「3,000円」へと劇的に削減されます。

ビジネスモデルとしては、この自治体における救急車運用予算の「削減効果」の一部を、Quickへのサービス利用料(削減レベニューシェア)としていただく仕組みがメインとなります。例えば、東京都や仙台市、茨城県といった規模の自治体において、9時間の運用で20%の軽症代替を達成した場合、県単位でのサービス契約単価は年間で約2.6億円を見込んでいます。運用時間を24時間化したり、削減率を40%に高めることで、県単位の単価は7.8億円、さらには15.6億円へとスケールしていきます。

自治体からのレベニューシェアに加え、提携タクシー会社からの送客手数料、および患者様からのタクシー運賃の一部という、3方向からのハイブリッドなマネタイズ設計を完了しています。

現在は、茨城県つくば市の消防とAIシステムの共同実証実験を進めており、搬送システムの部分についても、宮城県仙台市や茨城県日立市などの自治体(消防・医療政策課)や地元のタクシー会社様を巻き込んだ検討会を立ち上げ、実証実験に向けたスキームの構築を進めています。

筑波大学発の医療AIスタートアップとして、まずは実証実験で確固たるエビデンスを構築し、6年間で全国の自治体シェアの過半数(50%)を獲得することを目指します。救急逼迫に悩む自治体の関係者様、そして私たちのシードラウンドの資金調達(来年3月予定)に関心を持ってくださる投資家の皆様、ぜひ私たちの挑戦にご参画ください。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(伊藤氏):竹田さん、非常に社会的意義が大きく、逼迫する医療現場の課題にダイレクトに応える素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。救急車の削減コストからレベニューシェアを得るというビジネスモデルも極めて論理的で、自治体にとっても断る理由のない設計になっていると感じます。

質問ですが、自治体や医療機関をターゲットにするビジネスは、ステークホルダー(消防、医師会、自治体)が多く、意思決定や参入の障壁が極めて高いことで知られています。この領域において、Quickが競合他社に対して優位に立ち、その障壁を突破できると確信している「本当の強み」はどこにあるのでしょうか。

武田氏:ご質問ありがとうございます。

おっしゃる通り、自治体や医療、特に「119番通報」という社会インフラの核心に民間企業が入り込むことの難易度や障壁は極めて高いと認識しております。

その中での私たちの最大の強みは、開発チームおよび経営メンバーが「現役の医師・医学生」で構成されているという点です。救急医療政策の意思決定には、地域の「医師会」や「メディカルコントロール(MC)協議会」といった医療専門家組織の賛同と合意形成が絶対に不可欠です。自治体の行政担当者や消防だけで決めることはできません。

私たちは医師としての共通言語を持ち、医療側の論理や現場のペインを深く理解しているため、医師会やMC協議会といったドクターサイドからのアプローチで「このシステムは地域医療全体の崩壊を防ぐために不可欠である」という合意形成を直接行うことができます。この医療ロビーイング・ドメイン知識の深さこそが、他社には決して真似できない私たちの最大の参入障壁です。

また、AIに関しましても、OpenAIとの医療情報契約を結んだ上で、つくば市などの消防から実証データを直接提供いただき、3大LLMを掛け合わせた独自のファイン調整とRAGを構築しています。これにより、単なる「汎用AIのチャットボット」ではなく、救急トリアージに極限まで特化した高精度な製品パッケージを確立できている点も、技術的な大きな強みとなっています。

伊藤氏:なるほど。自治体への営業というよりは、医師会などの「医療の内側」からアライアンスと合意を形成し、政策そのものを動かしていくアプローチですね。医師・医学生チームならではの非常に強力な強みだと納得しました。

もう一点、ビジネスのKPIとして「電話をかけてきた患者自身が、タクシーでの代替搬送を本当に承諾してくれるのか」という懸念があります。救急車を呼ぶ人は焦って電話をかけてきているわけですが、タクシーを提案された際に「嫌だ、救急車をよこせ」とならないための対策や、患者側のメリットはどう設計されているのでしょうか。

武田氏:そこはまさに、このサービスの成否を分ける非常に重要なポイントです。

実は、患者様にとっても「無理に救急車で大病院に運ばれることのデメリット」は非常に大きいのです。緊急性のない軽症患者様が救急車で三次救急などの大病院に搬送された場合、当然ながらより重症な患者様が優先されるため、待合室で何時間も後回しにされて待たされることになります。さらに、その病院の専門外であれば、適切な処置を受けられないこともあります。

私たちのシステムでは、トリアージによって「今すぐ行くべき最適な中規模クリニックや専門医院」をリアルタイムで予約マッチングします。患者様に対しては、「大病院で何時間も待たされるよりも、今から手配するタクシーで、すぐ近くの待ち時間ゼロの最適なクリニックへ行った方が圧倒的に早く治療を受けられます」と医師が優しく丁寧に説明することで、高い確率で承諾(合意)をいただける設計にしています。

また、社会の背景として、現在茨城県や三重県などの一部の自治体で「軽症患者から救急車の選定療養費としてお金を徴収する(有料化)」動きが始まっています。救急車で運ばれると別でお金がかかるけれど、タクシーで行けば適切なクリニックへ早く行けるというインセンティブも働きやすくなっており、こうした時代の潮流とも非常にマッチしていると考えています。

伊藤氏:なるほど!大病院での待機時間のペインを解消し、最適なクリニックへのスムーズなマッチングで価値を提供する。さらに救急車の有料化という政策の動きも追い風になっているわけですね。

患者側、自治体、医療側の三方よしが非常によく設計されていると感じました。現役医師・医学生の力を結集して、ぜひこの日本の救急医療を救うインフラを実現していただきたいです。今後のつくば市での実証実験の進展を期待しております。ありがとうございました。

武田氏:ありがとうございます。頑張ります。