皆さん、よろしくお願いいたします。SYNRA(シンラ)株式会社代表取締役の島崎航平と申します。
弊社は、先月9月4日に創業したばかりの、まだ産声を上げたばかりの超アーリーステージのスタートアップです。しかし、創業前より広島県様をはじめ様々な創業支援プログラムや知的財産のサポートをいただき、本日このピッチの場に立つことができました。
私たちは「最初からグローバル市場を目指す」という強い志を持っており、多国籍なメンバーやエンジニアを中心としたチームで、産業インフラのあり方を変えるテクノロジーの開発に挑んでいます。
私たちがフォーカスしている課題は、プラントや橋梁などの大型産業インフラにおける「予知保全」のイノベーションです。
現在、社会全体で少子高齢化に伴う保全技術者の人手不足、老朽化する設備の増加、そして保守業務の属人化が深刻な問題となっています。様々なプラントや社会インフラにおいて、点検・計測しなければならない場所は増え続けています。
しかし、化学プラントや大規模工場などの現場には、高所、高温、高圧、さらには有毒ガスのリスクなど、「人間が近づくこと自体が極めて危険な極限環境」が数多く存在します。こうした場所には、そもそも測定用センサーを物理的に設置すること自体が困難であるという致命的な現場課題がありました。
従来は、機械の異常を検知するために「加速度センサー」などの物理センサーを対象物に直接貼り付けて振動を計測していました。しかし、貼り付け式のセンサーは「点(スポット)」での計測しかできず、設備全体の網羅的な「振動の分布」を把握することは不可能です。さらに、数万箇所に及ぶポイントにセンサーを貼り付けて配線するコストや手間も膨大でした。
また、他社のアプローチとして、カメラ映像を用いて振動を解析する技術も存在しますが、従来の技術は高速カメラで短時間だけ撮影した大容量動画を後からバッチ処理で時間をかけて解析するものが多く、リアルタイムの常時監視や、データの効率的な蓄積が困難でした。
私たちは、この課題を「高速カメラの映像解析」と「三次元座標マッピング」の技術で解決し、非接触で設備全体の三次元的な振動分布をリアルタイムに自動検知するシステムを開発しました。
私たちのソリューションは、対象の機械や設備に向けて高速カメラを設置し、その映像内に映る「目に見えない微細な揺れ(振動)」をアルゴリズムで解析するシステムです。
機械の振動は、いわばその「健康状態」を示すカルテです。前回の計測時や基準値と比べて、どの部分の揺れがどう変化したかを検出することで、トラブルの予兆を捉えます。
レリーズでは、以下のような手順で高精度な予知保全を実現します。
1. 非接触カメラ計測: 離れた場所から高速カメラで対象を撮影するだけで、物理的な接触なしに振動情報を取得。
2. 三次元ステレオ計測: 2台のカメラを用いることで、三角測量の原理により、対象物の「三次元的な振動情報(3Dダイナミクス)」を測定。
3. 実測データの3D可視化: 事前にスキャンして取得した設備の3Dモデル(CADデータ等)の上に、実測した振動データをインプット。微細な揺れを画面上で分かりやすく誇張表現して表示します。
単に全体が揺れているのを視覚化するだけでなく、取得した振動データを「周波数ごとに分解」する高度な解析アルゴリズムを開発しました。これにより、各振動の「強度」「発生位置」「時系列での変化」を個別かつ連続的に評価することができます。ユーザーは、「ポンプのこの接続部分の、この周波数の揺れが、先週から徐々に強くなっている。だから今月中に修繕を打とう」といった、極めて合理的で計画的な保全計画(統合的PDMソリューション)を組み立てることが可能になります。
私たちの持つコアな特許技術(知的財産)は、この解析アルゴリズムだけではありません。「カメラの視線(画角やフォーカス)を極めて高速に動かして制御するデバイスデザイン」の特許も保有しています。
この高速スキャン技術により、測定範囲が広大になればなるほど、他社を圧倒する効率性を発揮します。
さらに、リアルタイムでの処理能力が極めて高いため、固定されたカメラからの撮影だけでなく、将来的には「ドローン」や「UGV(無人自動運転車)」などの移動体にカメラを搭載し、プラント内を自動巡回しながら設備全体の振動を非接触でスキャンしていく「スマート・インフラ点検モデル」の実現を目指して開発を進めています。
私たちのビジネスモデルは、初期のカメラハードウェアとソフトウェアの「パッケージ導入」と、クラウドを通じたデータ解析ツール・異常検知ダッシュボードを提供する「サブスクリプション(SaaS)」の組み合わせを想定しています。
クラウド上に蓄積されるリアルタイムの振動データをもとに、デジタル座標空間上で「異常の自動検知」「部品ごとの劣化スコアの算出」「最適な修繕計画のAI提案」などを提供していきます。
現在、私たちは国内の製造業のパートナー企業様と共同で、実証実験(PoC)を開始しています。
例えば、プラント用大型ポンプの出荷前検査における実証実験です。
従来、メーカーが出荷前にポンプの異常振動を検査するには、大量の物理センサーを取り付けて測定する必要があり、多大な時間と工数がかかっていました。さらに、出荷後に想定外のトラブルが発生しても、原因がどこにあるのかを特定するのが困難でした。
私たちのシステムを導入することで、出荷検査の時間を大幅に短縮できるだけでなく、「どこの設計に負荷がかかっており、どう改善すれば振動が収まるか」を視覚的なデータとして明確に設計チームへフィードバックできるようになり、高い評価をいただいています。
今後は、プラント設備そのものだけでなく、橋梁などの「道路インフラの橋脚・ジョイント部分」を製造・評価しているメーカー様や、自動車部品の耐久性テストを行っている企業様とのアライアンスを強化してまいります。
創業したての若いチームですが、グローバルインフラの安全を守る新しいデジタル coordinate 空間を構築するため、全力で事業を推進しています。共に技術の実証や実用化を進めてくださるパートナー企業の皆様からのご連絡をお待ちしております。ありがとうございました。
コメンテーター(古子氏):島崎さん、非常に興味深く先進的なプレゼンテーションをありがとうございました。少子高齢化と人手不足の中で、老朽化していく産業プラントやインフラを「カメラで離れた場所から非接触で測る」というのは、まさにこれからの自治体や製造業が直面する課題に対する強力なソリューションになると感じました。
質問ですが、広島県様からも知財面でのご支援を強く受けられているとのことですが、具体的に御社が保有されている「特許技術(知的財産)」の強みについて、もう少し詳しく教えていただけますか。
島崎氏:ご質問ありがとうございます。
私たちが保有している特許は、大きく分けて2つの領域があります。
1つは、撮影した映像からノイズを除去してミリメートル単位、あるいはミクロン単位の微細な振動を正確に抽出する「解析アルゴリズム」の領域です。
もう1つは、「カメラの視線をミリ秒単位で極めて高速に動かす制御デバイス」に関するデザイン特許です。
他社のカメラ振動解析は、固定されたカメラの画角の中に映るものしか測れません。しかし私たちの技術は、カメラのフォーカスや向きを高速でスキャンさせながら撮影するため、1台のカメラでカバーできる面積・対象数が劇的に増えます。この「高速な視線制御デバイスとアルゴリズムの融合」こそが、広大なインフラを測定する際に他社が真似できない、私たちのコアな特許技術になります。
古子氏:なるほど。固定カメラで一部を狙うだけでなく、カメラ自体を高速制御して広範囲を一発でスキャンしていくハードとソフトの合わせ技なんですね。
もう一点、競合との比較の中で「常時モニタリング」というキーワードがありました。これは、カメラを定点でずっと置いて監視し続けるシステムなのか、あるいは先ほどおっしゃったドローンなどに搭載して「撮影した瞬間のデータから異常をスポット検知する」ものなのか、現在どちらの運用を想定されているのでしょうか。
島崎氏:結論から申し上げますと、両方の運用に対応しています。
定点監視(常時モニタリング)の場合は、常にカメラを設置してリアルタイムで振動データを処理し、基準値を超えた瞬間にアラートを出すことができます。
一方で、ドローンや移動ロボット(UGV)に搭載した「スポット巡回点検」においても、私たちの技術は大きな強みを発揮します。なぜなら、リアルタイムの処理速度が極めて速いため、カメラ自体が動いていても(ブレが発生していても)、その移動ブレの影響を自動で相殺し、対象物の振動だけを正確に計測できるからです。ですので、ドローンで橋やプラントをサッと撮影して通り過ぎるだけで、三次元の振動分布データを瞬時に取得して異常をマッピングすることが可能です。
古子氏:カメラが動いていても振動を相殺して計測できるというのは、ドローン点検において極めて実用性の高いブレイクスルーですね。
最後に、今後この技術を社会実装していくにあたり、具体的に「どういった業種の企業」と組むことでシナジーが生まれると考えていらっしゃいますか。
島崎氏:特に2つの業種の皆様との連携を求めています。
1つは、橋梁などのインフラの「構造部品や免震ゴム・部材」を製造、あるいはそれらを評価・検査しているメーカー様です。私たちのシステムを用いることで、部材にかかっているストレスや振動の分布を実測データとして三次元で可視化し、設計の高度化に貢献できます。
もう1つは、自動車のシャーシやエンジンなどの「部品メーカー」様です。製造ラインや耐久テストにおいて、これまでセンサーの貼り付けにかかっていた膨大な工数を削減し、非接触で即時に振動耐久性を評価するインフラとして機能させることができます。
古子氏:インフラの部材メーカーや自動車部品の評価プロセスなど、まさに「振動の測定と対策」にコストをかけているメーカーにとって、非常にコスト削減と精度向上に繋がる技術ですね。
先月創業したばかりとのことですが、技術のポテンシャルが非常に高いと感じますので、今後のアライアンスと実用化の進展を大いに期待しております。ありがとうございました。
島崎氏:ありがとうございました。