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📊 Event Report

【株式会社Ashirase】靴から伝える歩行ナビで「視覚障害者の歩行事故」をゼロにする。ホンダ発スタートアップ1号が挑む、世界初のウェアラブルと屋内3Dマップ革命

VENTURE PITCH ONLINE
2025/11/20
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電柱探しで田んぼへ転落する悲劇をなくす。注意力を「安全確認」に100%集中させるコンセプト

皆さん、よろしくお願いいたします。株式会社Ashirase代表取締役の千野歩と申します。私たちは、靴に取り付けるウェアラブルデバイスの足元振動によって、視覚障害者向けの歩行ナビゲーションを提供する製品「あしらせ(Ashirase)」の開発・販売を行っています。ホンダ発のベンチャーとしてスタートし、現在5期目を迎えたスタートアップです。

私たちのミッションは、「歩くこと」を基軸にしながら、人の生活の豊かさを作っていくことです。

現在、世界には3億人以上の視覚障害者がいるとされています。彼らの多くは、「一人で新しいレストランに行きたいけれど、危なくて絶対に叶わない」という深い悩みを抱えています。

例えば、私の地元である広島で出会った当事者の方は、交差点や曲がり角の位置を特定するために、道路脇にある「電柱」を手で触ることを目印にして歩いていました。ある日、いつもあるはずの電柱が工事などで撤去されてしまっていました。その方は必死に電柱を探すあまり、周囲への安全注意が疎かになってしまい、そのまま道路脇の田んぼに転落して頭部に大怪我を負ってしまいました。

視覚障害者が歩くときは、「今自分がどこにいるのか」「進むべきルートはどちらか」「障害物はないか」など、膨大な情報を脳内で処理し、必死に探さなければなりません。この「注意力の分散」こそが、衝突や転落といった重大事故を引き起こす最大の要因となっています。

私たちの提供するあしらせは、足元の振動によって直感的に進むべき方向を指示します。これにより、ユーザーはルート確認のためにスマホの画面を見たり音声ガイドを聞いたりして注意をそらす必要が一切なくなります。白杖(はくじょう)での障害物検知や、周囲の音を頼りにした「安全確認」だけに自身の注意力を100%集中できる環境を提供することが、私たちの製品コンセプトです。

玄関で靴を履くだけ。ユーザー解約率0.5%を誇る直感的な足元振動インターフェース

あしらせのデバイスは、靴のインソールとアッパーの間に立体的に挟み込むように装着する薄型のベルト形状をしています。一度靴にセットしておけば、玄関でいつも通りその靴を履くだけで準備完了です。

スマートフォンアプリでナビゲーションを開始すると、デバイスが自動的に連動して足元が振動し始めます。スマホを取り出したり操作したりする必要はなく、耳も塞がないため、完全にハンズフリーかつアイズフリーで歩行できます。

振動のさせ方には、直感的に伝わる設計を施しています。デバイスには足元を前後左右で立体的に振動させる複数のアクチュエーターが組み込まれており、進むべき方向の足元が振動します(例:左に曲がる地点では左足が振動)。正しく進行方向に向き直ると、両足の前側が同時に振動して「直進」を示します。また、曲がり角が近づくにつれて振動のテンポが速くなり、曲がるべきタイミングを体感的に知らせます。

この圧倒的な直感性が評価され、昨年末の販売開始からすでに700台以上を販売しました。顧客推奨度を示すNPS(ネットプロモータースコア)は、70点以上が最高峰とされる中で「65ポイント」という異例のハイスコアを記録。月額制のユーザー解約率(チャーンレート)も「0.5%」という極めて低い水準を維持しており、確固たるプロダクトマーケットフィット(PSF)を実証しています。

欧州・オーストラリアで国庫給付(医療補助金)を獲得し、海外市場をアグリゲーション

あしらせは、視覚障害者というグローバル共通の深刻な課題を解決するデバイスであるため、初期から強力な海外展開を進めています。

私たちの海外進出戦略(Go-To-Market)は、各国の「医療機器認定」および「公的補助金制度(支援機器支給制度)」の獲得を軸にしています。

オーストラリアやドイツなどのヨーロッパ諸国では、視覚障害者向けの支援機器に対して手厚い国庫補助金(給付金)が出る仕組みが整っています。私たちは現地の大手代理店(ディストリビューター)と提携し、彼らを介して現地の病院や当事者団体へ製品を供給します。日本国内での販売価格の約2倍にあたる「600ユーロ(卸価格)」で現地の給付制度にのせる内諾を得ており、為替の恩恵も受けながら極めて高い利益率でのグローバル展開を開始しています。

現在、すでにヨーロッパ、オーストラリアを含む5カ国で主要なパートナーを確保しており、2026年2月より本格的な出荷が開始されます。これらを足がかりに、世界に1億人以上存在する支援機器を必要とするターゲット層に向けて拡大を加速させます。

GPSの届かない屋内をハックする。ビーコン不要の3Dカメラ画像即位とARナビゲーション

あしらせの開発プロセスの中で、当事者から最も多く寄せられたのが「GPSの届かない駅構内や地下街などの屋内で迷ってしまう」という強いペインでした。

そこで私たちは、この数年間、屋内でも正確にナビゲーションを実行できる空間認識技術の開発に取り組んできました。この技術を確立したところ、視覚障害者のみならず、車椅子のユーザーや一般の歩行者からも「ぜひ使いたい」という大きな反響があり、私たちはこれを「屋内のGoogleマップ」とも言える独立したB2B空間DX事業として切り出しました。

このシステムでは、スマートフォンを空間にかざすだけで、ビーコン(発信機)やWi-Fiなどの高額な屋内設置型ハードウェアを一切必要とせず、自己位置を即座に特定します。

技術的には、スマートフォンのカメラ画像から周囲の空間を「3Dマッピング」し、私たちの持つ「歩行軌跡推定アルゴリズム(カリフォルニア大学との共同研究)」と掛け合わせることで、自己位置をセンチメートル単位の高精度で特定(即位)します。さらに、カメラ画像から空間内の信号機や標識、商業施設の「商品棚」などの情報を自動で取得・学習し、デジタル地図データを自律的に更新・ストックする地図生成技術も保有しています(全輪(ゼンリン)様や自動車メーカー様と共同開発)。

アプリの操作は、視覚障害者の利用を前提として開発したため、独自の「完全対話型音声UI」を組み込んでいます。画面操作を一切することなく、アプリに声で「〇〇に行きたい」と話しかけるだけで、AR(拡張現実)ナビゲーションが立ち上がり、エレベーターや段差を避けた最適なルートを案内します。

この空間DX技術は、エレベーターメーカー様との車椅子誘導連携、大手デベロッパー様の地下街開発、さらには商業施設やホテルの新人スタッフ向けの館内誘導教育パッケージなど、多様なB2Bパイプラインが稼働しています。

元ホンダ自動運転チームの知見を注ぎ込んだ、徹底的な訴訟・賠償リスクヘッジ

海外、特にアメリカなどの訴訟大国に進出するにあたり、歩行ナビゲーションにおける「事故の賠償責任」はスタートアップにとって死活問題となります。

私はホンダ時代、長年にわたり自動運転の「安全論証(リスクアセスメント)」を担当していました。その知見を活かし、あしらせは法的リスクヘッジを徹底的に設計しています。

私たちのシステムは、あえて「安全支援」ではなく「ルート案内(ナビゲーション)」という役割に機能を厳格に特化させることで、事故時の製造物責任(PL責任)や訴訟リスクからシステム本体を法的に分離(排除)しています。4年間におよぶ国内6万回以上の走行実証でも事故件数はゼロですが、ヨーロッパの医療機器認定に必要な「リスクアセスメントドキュメント」はプロの監査を経てすべて提出を完了しています。さらに、万が一の米国等での高額な訴訟に備え、現地法人(子会社)を設立して日本の本社へのリスク伝播を完全に遮断するコーポレート設計も完了しております。

私たちのステップとしては、まず国内外のB2Bパイプラインとデバイス販売を同期させて拡大し、2026年中頃からはスーパーやコンビニ内の「商品棚のミリ単位のナビゲーション」および「棚卸データの自動取得」といったデータサービスへと拡大してまいります。これらを通じて、2030年には年間売上高100億円の達成を目指します。

現在、シリーズAに向けた資金調達を進めております。私たちの歩くイノベーションと空間DXに共感していただける投資家、自治体、デベロッパーの皆様からのご連絡をお待ちしております。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(副店長氏):千野さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。靴を振動させて直感的に案内するガジェットと、GPSの届かない屋内をカメラ画像だけでマッピングして案内する空間技術、どちらも非常に明るい未来と社会課題の解決が見える製品ですね。

少し私の理解を追いつかせるためにお聞きしたいのですが、靴が振動するというのは、具体的に右に曲がりたいときは右側が震える、といったように足裏や側面に何らかの刺激があるというイメージで合っていますでしょうか?

千野氏:ご説明が不足しており大変失礼いたしました。デバイスは非常に薄いベルトのような形状になっていて、靴の内側(アッパーの周囲)に立体的にフィットするように装着されます。これによって、足の「前・後・左・右」の異なる部分を独立して振動させることができます。

例えば、GPSマップ上でユーザーが左側の角を曲がるべき位置に達すると、足の「左側」にあるアクチュエーターだけが振動します。ユーザーは「あ、左側が震えているから、左に曲がるんだな」と直感的に分かります。そして体を左に向けて進むべき方向へ正しく体が向くと、今度は両足の「前方」が振動し、「そのまま真っ直ぐ進んでください」という合図になります。また、角が近づくにつれて振動の間隔が速くなる(パルス変化する)ため、曲がるタイミングも足の感覚だけで100%理解できます。これにより、白杖の操作や周囲の交通音を聞き取る「耳」を完全に空けた状態で歩行が可能になります。

副店長氏:なるほど、足の向きと進行方向のズレをセンサーが検知し、向き直るべき方向を振動で伝えるわけですね。これなら確かに、音声ガイダンスを聞き取る必要がなく非常に安全です。

一方で、やはり視覚障害者の方が外を歩くとなると、万が一ナビの誤差や判断ミスで「点字ブロックから外れて転落してしまった」「交差点に誤って進入してしまった」といった事故が起きてしまった際、その法的責任や訴訟のリスクについてはどのようにお考えでしょうか?

千野氏:非常に重要なご指摘です。私はもともと本田技研工業(ホンダ)で自動運転システムの安全論証、つまり「どうすればシステムが安全であることを証明できるか」を専門にしていたため、この製品設計においても初期から徹底的なリスクヘッジを組み込んでいます。

まず、私たちの「あしらせ」は、障害物を避けるといった「能動的な安全の担保」は白杖や盲導犬という既存の手段に任せ、機能としては「道順の案内(ナビゲーション)」に厳格に特化させています。これにより、法的にナビゲーションとしての役割を超えた責任追及(訴訟)を回避する安全論証スキーム(ドキュメンテーション)を構築しています。

医療機器認定に必要なリスクアセスメントの書類も専門コンサルのチェックを経て作成・提出を終えています。また、訴訟リスクの極めて高い米国などへの展開においては、現地法人(米子会社)を設立し、デバイス販売やサービス提供を子会社経由で行うことで、万が一の大型訴訟の際にも親会社(日本本社)や技術アセットを守る「リスクの切り離し」をコーポレートガバナンスとして設計・実行しています。もちろん、過去4年間・6万回以上の検証で事故は一件も発生しておらず、安心してお使いいただける信頼性を誇っています。

副店長氏:なるほど。元自動運転の安全責任者としてのバックグラウンドをフルに活かし、ドキュメンテーションや法務、コーポレート設計の両面で強固なヘッジをかけているのですね。これならグローバル展開も安心です。

最後に、屋内のナビゲーションにおける「地図データの蓄積」について、Wi-Fiやビーコンを使わないとなると、スマホのカメラで撮影しながらデータを集める必要がありますが、この膨大な空間データの更新作業は、御社側とユーザー側のどちらがどうやって行っていくのでしょうか?

千野氏:ありがとうございます。初期の空間地図データの構築については、ゼンリン様や大手自動車メーカー様といった強力な地図・空間アセットを持つパートナー企業と提携してデータを収集しています。

そして、一度初期データを作った後は、アプリを使っている一般のユーザー(当事者や一般歩行者)がナビゲーションを使用する際、スマホのカメラから得られる周囲の画像をバックグラウンドで解析し、地図データを「自動的・半自律的にアップデートする技術(クラウドマッピング)」の開発を進めています。2026年半ばの実装を目指しており、ユーザーのスマホのバッテリー消費を極限まで抑えながら、空間の「信号が変わった」「新しい棚ができた」といった微細な差分データだけを自動抽出し、サーバーに蓄積して地図を最新化します。この半自動マップ更新の技術こそが、デベロッパーや店舗に対して高付加価値なデータサービスを提供する私たちの最大の競争優位性になります。

副店長氏:一般のユーザーが歩くだけで、自動的に最新の屋内3Dマップが生成され、それが店舗やビル管理のデータビジネスになる。非常に大きな可能性を感じます。今後の調達と事業推進を期待しております。

千野氏:ありがとうございます。社会の歩行インフラをより豊かにするために挑戦を続けます。