私はかつて国会議員の秘書を務め、その後、総務省の戦略広報アドバイザーとして一民間人でありながら官僚組織の中で働いておりました。そんなある日、エンジェル投資家の方に突然呼び出され、「何でもいいから起業しろ」と言われたことをきっかけに、1年半ほど前に当社を立ち上げました。
私のこれまでの経歴から、政府や各政党、多くの国会議員の先生方との強いパイプがあります。そのため、私たちは最もDXから取り残された「政治・政党・行政広報」の領域において事業を展開しています。
私が起業した最大の原体験は、国会議員秘書時代にあります。猛暑の日も、極寒の日も、自転車で一件一件の家を回って手作業でチラシをポスティングし、街頭ポスターを貼っては剥がされるという、あまりにもアナログな作業を繰り返す中で、「なぜこれほど非効率な世界が残っているのか」と強い疑問を感じていました。どれだけ一生懸命にポスティングを続けても、マンションのゴミ捨て場にごっそり捨てられているのが現実でした。
政治の世界のDXが必要であることは誰もが総論としては賛成しますが、民間企業がこの領域に参入できなかった理由は2つあります。1つは「公職選挙法(公選法)」が極めて複雑で、一歩間違えると逮捕者が出るリスクがあるため参入障壁が非常に高かったこと。もう1つは、民間メディアが「政治広告」を自主規制として完全に排除してきたことです。
私は総務省で公選法を担当していた知識と人脈を活かし、複雑な法律の正しい解釈をクリアにして「ルールメイキング」を行うことで、この巨大なブルーオーシャンへ参入することに成功いたしました。
選挙の際に街中に設置される「公営掲示板」は、全国にコンビニエンスストアの総数の約6倍にのぼる数が存在します。この木製や金属製のポスター掲示板を設置・撤去するだけで、1回の選挙で約65億円の税金(公費)が費やされています。さらに豪雪地帯での選挙になれば、掲示板の雪かき作業などの維持管理費が乗り、ポスター掲示板だけで100億円近くに膨らみます。
選挙全体の公費負担額は、かつては600億円規模でしたが、近年の物価高騰や人件費の高騰により、現在では約700億円規模にまで膨れ上がっています。これほど莫大な予算を投じているにもかかわらず、その費用対効果は極めて低く、若者の投票率は50%前後に低迷したままです。
また、候補者にとっても、暑い日も寒い日も支援者が街を駆け回って何百枚ものポスターを手作業で貼って回る作業は、深刻なボランティア不足の中で多大な負担となっています。
私たちは、約1年間にわたり各メディア媒体社と粘り強く交渉を重ねました。その結果、ファミリーマート様(伊藤忠グループ)や東急様系列といった主要なデジタルサイネージメディアにおいて、一定の条件付きで政治広告の出稿を解禁していただくことに成功いたしました。
その突破口となったロジック(付加価値)は、広告の「コンテンツ(内容)の変換」にあります。
メディア側が政治広告を敬遠していた理由は、「○○党に投票してください」「○○候補をよろしく」といった特定のイデオロギーや投票の直接的な呼びかけが、店舗のブランドイメージを損ねるからでした。
そこで私たちは、「年金改革の必要性」「社会保障や医療制度の課題」といった、誰もが議論すべき「社会課題解決に向けたメッセージ(政策広報)」にコンテンツを変換して配信することを提案しました。このコンテンツ作成自体も当社が一気通貫で担当することで、店舗のブランドを守りつつ、有権者に政治の争点をダイレクトに届ける配信枠を確保することができました。
これにより、候補者は有権者が日々訪れる生活導線上(フィジカル空間)で、最も効率的に認知を獲得することができます。
また、従来の紙のポスターとは異なり、デジタルサイネージであれば動画やアニメーションを用いた「動きのある表現」が可能です。PDFポスターをただ表示するだけでなく、政策テーマを分かりやすくスライドで解説するなど、有権者の目を引く多様な表現によって、無関心層の関心を引き寄せることができます。
すでに河野太郎先生をはじめとした、多くの超大物政治家や各政党から多数の問い合わせをいただいており、まさに導入が急速に進んでおります。
選挙ビジネスは、解散総選挙のように突発的かつ季節性が強いため、スタートアップとして安定した売上を立てるのが難しいというリスクがあります。
そこで私たちは、選挙期間以外の「ライスワーク(安定収益源)」として、企業向けの「ガバメント・リレーションズ(官公庁向けロビング)およびルールメイキングのコンサルティング事業」を展開しています。
デジタルサイネージでの政治広告出稿をフックにして、大物政治家や各省庁のキーパーソンと直接の接点(関係性)を構築します。そこから、企業側が政府に対して法改正を求めたい場合のロビング活動や、ルール形成のコンサルティング案件を数千万円規模で受注するシナジーモデルを確立しています。
今回のピッチでの目標は、事業拡大に向けた「資金調達」です。激動する政治の変革期において、公選法とルールメイキングの強みを活かし、市場を独占的に開拓してまいります。死なないように頑張って走り抜けますので、応援よろしくお願いいたします。
島澤氏(コメンテーター):松井さん、ピッチありがとうございました。政治の世界は一般の民間ビジネスから見ると非常に解像度が低い領域ですので、大変勉強になりました。
ビジネスモデルについて確認ですが、自社でサイネージ筐体を購入・設置して配信するのと、他社媒体への代理出稿、この両方で広告収入を得る形でしょうか?
松井氏:ご質問ありがとうございます。おっしゃる通り、自社設置による配信モデルと、すでに稼働しているファミリーマート様や東急様などのデジタルサイネージ媒体への代理出稿モデル(代理店手数料3割)の両輪で展開しております。
政治広告が99.9%拒否される中で、1年かけてファミリーマート様などの主要媒体と交渉し、「投票の直接的な呼びかけではなく、社会保障改革などの政策テーマにコンテンツを変換して流す」というロジックで解禁できたのは、私たちの大きなアセットです。単なる配信枠の販売ではなく、出稿する政治コンテンツの作成自体も私たちがすべて担当しております。
島澤氏:なるほど。有権者が普段利用するコンビニや交通機関といったフィジカルな生活空間で、選挙区ごとにピンポイントでアプローチできる地理的ターゲティングは、政治家にとって極めて魅力的ですね。
一方で、選挙は突発的な解散などがあり、売上が安定しにくい季節性リスクがあると思います。ここはどうカバーされる予定ですか?
松井氏:まさにその通りで、選挙だけに依存すると企業としては非常に不安定になります。そのため、私たちはもう一つの柱として、大物政治家や省庁との直接的なパイプを活かした「ガバメント・リレーションズ(官公庁ロビング)やルールメイキングのコンサルティング事業」を常時展開しております。サイネージ広告をフックとして関係性を構築し、そこから民間企業のコンサルティングやロビング案件を受注するシナジーにより、年間を通じて安定した高収益を確保できる構造にしています。
島澤氏:行政やガバメント、アカデミック領域はDXが最も遅れている「最後のホワイトスペース」ですので、参入障壁の高いこの領域をルールメイキングでこじ開けた松井さんの挑戦は非常に期待が持てます。忙しい時期が急に来て大変だと思いますが、応援しております。
松井氏:ありがとうございます。今回の選挙でも多くの実績を作れるよう、死なないように頑張ります。