これまでの日本の街づくりにおいては、新しいものを作ることが主役でした。しかし、今の街を見渡すと、高度経済成長期の後半やバブル期に建てられた建物が徐々に老朽化し、全国で深刻な空き家問題が発生しています。これからの時代は、今ある役目を終えた建物を取り除き、適切にリサイクルしていくことが非常に重要になります。そうした解体が当たり前の文化として定着する世の中にしていきたいと考えています。
私は大学卒業後、積水化学工業(セキスイハイム)に入社し、ハウスメーカーの現場で解体工事にも数多く携わってきました。そこで直面したのが、解体業界における極端な情報の非対称性、施主(お施主様)から見たときの見積もりの分かりづらさ、そして多重下請け構造による無駄なマージンの発生でした。この原体験が、本サービスを立ち上げた背景にあります。
現在、当社のメンバーは約100名。戦略コンサルティングファームのBCG(ボストン コンサルティング グループ)出身者やソニー出身の優秀な人材に加え、実家が解体工事会社でこの道25年のベテランまで、多様なバックグラウンドを持つ専門家が集まり、一丸となって事業を成長させています。
私たちが取り組む市場は、まさにこの「解体業界」です。国が公表している床面積のストック統計調査を見ても、高度経済成長期の建物はすでに寿命を迎えて解体が進んでいますが、バブル期に建てられた巨大なストックもこれから順次解体が必要な局面に入ります。さらに空き家問題も加わり、日本の解体市場は現在、約1.5兆円の規模に達しています。これは年率5%程度で成長を続けており、将来的には最大で4兆円を超える巨大マーケットになると私たちは推測しています。
お施主様にとって、これから住む「新しい家」にお金を使いたいというニーズは当然強いですが、今あるものを壊す「解体工事」に対しては付加価値を感じにくく、「できるだけ安く壊してほしい」という価格への要求が極めて強い傾向にあります。
一方で、建設業界全体の人手不足や、産業廃棄物のリサイクル・処分に関する法規制の厳格化により、工事原価は高騰し続けています。
このように「安く抑えたい需要」と「高騰する原価」の板挟みになりながら、業界はいまだにアナログな消商習慣や業務フローから抜け出せず、合理化が進んでいません。その結果、工事会社が適切な利益(利潤)を稼げなかったり、不法就労者を雇用したり、環境に負荷をかけるような無理な工事が発生したりと、構造的な歪みが歪みを生む状況になっています。この負の連鎖を打破するためには、業界の仕組み自体を抜本的に変革することが急務です。
1つ目は、マッチングを最適化する「プラットフォーム事業」です。全国2,000社以上の優良な解体工事会社が登録しており、施主様が一括で見積もりを取り、最適な会社と簡単にマッチングできるサービスです。これまで15万人以上にご利用いただいています。
特に直近では、全国131の地方自治体において、自治体公認の空き家対策ソリューションとして導入が進んでいます。横浜市、神戸市、札幌市といった主要都市をはじめ、地方都市の空き家対策窓口でも当社のプラットフォームが推奨され、官民連携で空き家問題の解決にあたっています。
2つ目は、より深くバプリチェーンに介入する「スマート解体事業」です。当社が工事の元請けとなり、営業から始まり、実際の施工管理、そして産業廃棄物の最終処分までをDX(デジタル技術による合理化)を用いて一元管理するサプライチェーンマネジメント(SCM)サービスです。
単なるマッチングにとどまらず、施工の品質や工期(納期)、廃棄物の適切なリサイクルプロセスまでを当社が保証・コミットすることで、品質と法令遵守を最優先される法人様(BtoB)の間で非常に強く支持され、ビジネス利用が急拡大しています。
当社はこれまで、累計27.7億円の資金調達を実施し、日本郵政、大和ハウス工業、ゼンリンといった日本のインフラ・不動産を支えるリーディングカンパニーと協業を行ってきました。ここからさらにアライアンスを拡大するため、以下のようなパートナー企業様を募集しています。
- 不動産会社・ハウスビルダー様(土地の売買や建て替えに伴う解体ニーズの共有)
- 地方銀行・信用金庫などの金融機関様(資産整理や相続の相談窓口での連携)
- 保険会社様(空き家リスクや不動産相続に関連する新サービスの共同開発)
- 多店舗展開を行う事業者様(自社店舗のスクラップ&ビルドや社屋整理の最適化)
また、当社は単体の解体事業にとどまらず、大手不動産会社やAirbnb、不動産の買取再販会社など様々なプレイヤーが参画する「全国空き家対策コンソーシアム」を立ち上げ、その代表理事企業を務めています。これにより、解体だけでなく、相続から売却、再利活用までを含めた「家じまい」のワンストップサービスをアライアンス企業様とカスタマイズして構築することが可能です。ぜひお気軽にお声掛けください。
コメンテーター(藤木氏):川口さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。名刺を振り返ってみたら、最初にお会いしたのはなんと2017年でした。大変ご無沙汰しております。当時からプレゼンが非常にお上手でしたが、さらに磨きがかかり、累計の資金調達額も積み上がって事業を力強く伸ばされている様子をお聞きし、本当に感慨深いものがあります。
ステージもかなり進んでいると思いますので、シンプルな質問をさせてください。現在「プラットフォーム事業」と「スマート解体事業」の2つの軸で展開されていますが、今後それぞれどのようにグロースさせていくのかという点と、どちらにビジネスの重心(アクセル)を置いていく計画なのか、そのあたりの戦略をお聞かせください。
川口氏:藤木さん、本当にお久しぶりです。温かいコメントをいただき非常に励みになります。
ご質問いただいた2事業のグロース戦略ですが、まず「プラットフォーム事業」については、現在導入いただいている131の自治体から、日本全国にある1,717の全自治体への導入を目指しています。日本の空き家率は今後さらに上昇し、「4軒に1軒」「3軒に1軒」が空き家になる時代が来ると言われています。自治体も予算や人手がない中、民間リソースの受け皿として私たちのプラットフォームをインフラのように使っていただくことが重要です。
一方で「スマート解体事業」については、ビジネスの明確な「成長の重心」として位置づけており、今まさに最もアクセルを踏んでいる領域です。スマート解体は、マッチングを超えて解体のバリューチェーン全体に深く入り込むため、施工品質やコスト、納期、リサイクル率に直接コミットできます。これまで属人化していた施工プロセスのオペレーションをITの仕組みで徹底的にDX・合理化し、そこで創出したコストメリットを法人顧客に提供していくことで、BtoBでのシェアを一気に拡大していく計画です。
コメンテーター(藤木氏):なるほど、スマート解体がこれからの本命であり、DXによるコスト・品質メリットでBtoBを攻めていくのですね。
チャット欄の視聴者コメントからも、「銀行などの金融機関がシナジー先として考えられている理由と、具体的なアライアンスのパターン」についての質問が来ていますが、こちらはいかがでしょうか?
川口氏:ご質問ありがとうございます。地方銀行や信用金庫の皆様は、顧客企業や個人主主の方々から、設備投資や店舗の出退店、あるいは不動産の相続や資産整理に関するご相談を日々受けられています。その際に、解体というラストワンマイルのプロセスがボトルネックになるケースが多々あります。
私たちの組み方としては、単なる「解体業者の紹介」にとどまらず、先ほどご紹介した「全国空き家対策コンソーシアム」のスキームも活用し、金融機関様の相続手続きや資産活用のご相談のフローに、私たちの解体・家じまいソリューションを「ワンストップのアライアンス」として組み込んでいただくパターンを想定しています。これにより、金融機関様にとっても顧客の課題解決能力が高まり、休眠資産の早期現金化や融資機会の創出に繋がると考えています。パートナー企業様のご要望に合わせて柔軟にカスタマイズできますので、ぜひご一緒できればと思います。
コメンテーター(藤木氏):顧客の「家じまい」の受け皿として、銀行の相談業務とワンストップで結びつけるのは、非常に理に適ったアプローチですね。今後の展開がますます楽しみになりました。ありがとうございました。
川口氏:ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。