ETHチューリッヒ、インペリアル・カレッジ・ロンドン、およびニュー・エコノミック・スクールの研究チームは、パキスタンの司法制度において大規模なAI活用実験を実施しました。OpenAIのGPT-4を基盤としたAIアシスタント「JudgeGPT」を導入した結果、膨大な未処理案件の解決が促進され、高い投資対効果が確認されました。
「JudgeGPT」は、パキスタンの第一審裁判所向けに特別に構築されたAIツールです。約12万9,000件の裁判例や関連法規をデータベース化し、RAG(検索拡張生成)技術を用いて関連情報を提示します。裁判官が質問を入力すると、ツールが根拠を示しながら回答を生成する仕組みです。今回の実験にはパキスタン国内118の裁判所、1,559名の裁判官が参加しました。
実験の結果、単なるAIの導入だけでなく、適切なトレーニングを受けたグループで顕著な成果が見られました。トレーニングを受けた裁判官は、AIを文章の要約や推敲といった信頼性の高い作業に活用し、広範な法的判断は自身で行うという使い分けを習得しました。結果として、トレーニングを受けた裁判官がいる地区では年間1,848件の案件追加処理が実現し、投資額1ドルに対して約38.50ドルの経済的価値を生み出しました。
研究チームは、AIが裁判官に取って代わるものではなく、適切な活用訓練とセットで導入することで公共部門の生産性を最大化できると結論づけています。今回の実験ではGPT-4が使用されましたが、最新の推論能力を持つAIモデルを導入することで、さらなる精度の向上と、AI特有のハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスク低減が期待されるとしています。