皆さん、よろしくお願いいたします。アイファームの飯野恵多と申します。
弊社は、再生可能エネルギーと次世代の農業システムを組み合わせ、世界の食料生産システムに革命を起こすことをミッションに掲げているスタートアップです。
私たちが展開している事業のコアは、「植物工場」「アイスランド」「日本のおいしいイチゴ」という3つの掛け合わせにあります。
なぜ、いま「植物工場」なのでしょうか。
現在、地球規模の気候変動や深刻な干ばつ、水不足などによって、従来の屋外で行う世界の農業は非常に深刻な行き詰まりを見せており、大きな転換期を迎えています。
その解決策として、天候や外部環境に一切左右されない、屋内施設による「環境管理型の次世代農業システム」が強く求められています。植物工場の大きなメリットは、完全無農薬で栽培できること、そして高品質な農産物を一年中、安定して計画生産(通年生産)できる点にあります。
しかし、植物工場の最大の弱点は、エアコンやLED照明を稼働させるための膨大な「電気代」です。
そこで私たちが目をつけたのが、「アイスランド」という国です。
アイスランドは、国の電力のほぼ100%を水力発電と地熱発電という自然エネルギー(再生可能エネルギー)で賄っています。そのため、電気料金が極めて安いという圧倒的な特徴があります。どのくらい安いかというと、日本のおよそ3分の1、ヨーロッパの他の国々と比べると実質「5分の1」程度という安さです。
電気代がランニングコストの大半を占める植物工場にとって、これ以上ない最適な立地なのです。
さらにアイスランドは、平均賃金が世界でもトップクラスに高い国であり、高級農産物をブランド化して高価格帯で販売するのに適しています。
地理的にも、ロンドンやパリといったヨーロッパの主要都市まで飛行機で3〜4時間という好立地にあります。つまり、「アイスランドの工場で朝に収穫した完熟イチゴを、その日の夕方にはロンドンやパリのレストランに下ろす」という、極めて新鮮な状態での超短時間物流ルートが構築可能なのです。
そして、私たちが生産するのが「日本のイチゴ」です。
日本にいると気づきにくいのですが、日本のイチゴは味わい、甘み、柔らかさにおいて間違いなく「世界一」のおいしさを誇ります。
海外で一般的に流通しているイチゴは、輸送に耐えられるように皮が非常に硬く、酸味が強いものがほとんどです。一方、日本の品種(私たちは紅ほっぺなどを栽培しています)は、非常に柔らかく甘みが強いものの、傷みやすいため日本から海外へ完熟状態で輸出することは不可能です。
だからこそ、現地の安価な再エネを使った植物工場で日本品種を生産し、その場で収穫して届けることで、既存の海外品種に対して圧倒的な差別化を図ることができます。
現在、現地の富裕層や高級レストラン向けに、1キロあたり2万〜3万円、1粒500円といった極めて高いブランド価格で販売できる体制を作っています。
私たちは現在、日本法人と現地法人の両方を設立し、少数のプロフェッショナルなメンバーでこのプロジェクトを推進しています。
私たちの強みは、植物工場の専門家、イチゴ農家のプロ、そして海外展開のプロをまとめ上げ、泥臭く形にする「突破力」と「巻き込み力」です。
2年前にアイスランドに単身乗り込み、ゼロから交渉を開始して1から工場を建設しました。現在では、現地の電力会社、航空会社、旅行会社、さらには政府関係組織やサポーターから強力なバックアップをいただける関係を構築しています。
現地では各種イベントやワークショップ、ポップアップストアなどを展開し、現地の新聞やラジオなどのマスメディアでも大きく取り上げていただきました。
さらに、オランダやノルウェーで開催された農業会議に出席したほか、アイスランド大学のジャパンフェスへの出展、在アイスランド日本大使館が主催する天皇誕生日レセプションでは、私たちのイチゴを来賓の方々に提供し、大きな絶賛の声をいただきました。
今年2月からは、ついに実際の収穫と販売を開始いたしました。
販売先は、B2Cの個人向けギフト需要だけでなく、B2Bとして現地の「星付きレストラン」や「高級ホテル」を中心に展開しています。非常に高い反響をいただいており、現在は生産が追いつかないほど注文が殺到している状態です。
実業家の堀江貴文さんにも現地のアイスランド工場を視察していただき、「本当によくイチゴを実らせたね」と高い評価の言葉をいただきました。
さらに、大阪万博の事務局からもお声がけをいただき、来日されたアイスランド大統領に対して、私たちのプロジェクトとイチゴのPRを直接実施いたしました。国の「ものづくり補助金(グローバル枠)」にも採択され、最大3000万円の補助金を活用して、今後はAIによる栽培管理など体制のさらなる強化を進めてまいります。
私たちのロードマップとしては、この11月からいよいよ本格的な通年生産(年中収穫)のフェーズへと移行します。今後5年間で生産量と売上高を劇的に拡大し、高い利益率を誇る「グローバル・フードテックモデル」を確立します。
市場規模といたしましては、まずはアイスランド国内のイチゴ市場のわずか10%(富裕層マーケット)を抑えるだけでも、10億円規模の売上が見込めます。
さらに、空輸を活用してロンドンやパリへ展開を進めます。EU全体のイチゴの市場規模は4000億〜5000億円に達するため、そのわずか10%を獲得するだけでも40億円以上の巨大なビジネスになります。イチゴの生食だけでなく、加工品の展開や、植物工場のパッケージ(フランチャイズ)販売なども視野に入れています。
私たちは、単にイチゴを栽培する農業ベンチャーではなく、日本の優れたバイオ技術とアイスランドの再エネ資源を繋ぎ、日本・アイスランド・EUを繋ぐハブ企業へと成長していく決意です。
現在、年内の収穫量最大化と体制構築に向け、3000万円規模の資金調達を実施しております。世界の食料生産システムを変えるこの挑戦に、是非ご参画いただければと思います。ありがとうございました。
コメンテーター(福谷氏):飯野さん、素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。アイスランドの地熱・水力による「激安の電気代」に着目し、そこで世界一美味しい日本のイチゴを植物工場で栽培してヨーロッパ市場を狙うというのは、極めて合理的でダイナミックなビジネスモデルですね。
質問ですが、1キロ2万〜3万円、1粒500円といった極めて高い価格帯でのブランド化を狙うとのことですが、やはりターゲットは富裕層や一部の高級飲食店に限定されるのでしょうか。将来的に、一般の消費者にもこの美味しいイチゴを届けるプランはあるのでしょうか。
飯野氏:ご質問ありがとうございます。
最初のステップとしては、おっしゃる通り高級ホテル、星付きレストラン、および富裕層向けのギフトにターゲットを絞り、徹底的なプレミアムブランドとしての地位を確立します。立ち上げ期においては、生産量が限られているため、卸価格が下がってしまう一般スーパーなどには流通させず、最も高く売れる販路に集中する方が事業効率が良いためです。
ただし、将来的に工場の規模を拡張し、生産コストをさらに下げることができれば、一般のスーパー(すでに引き合いは多数いただいています)にも流通を広げ、より多くの方に手頃な価格で日本のイチゴを食べていただける体制を作っていきます。
福谷氏:なるほど。まずはブランドを作ってから、生産拡大とともに大衆層へとアプローチしていくわけですね。
もう一つ、なぜ「日本で工場を建てて生産し、海外へ輸出する」のではなく、「アイスランド現地で生産する」必要があったのでしょうか。日本国内で生産した方が、ノウハウの蓄積や人員の確保もしやすいかと思うのですが、現地生産にこだわる理由を教えてください。
飯野氏:そこには「イチゴの物流」と「日本のイチゴ市場」という2つの大きな理由があります。
1つは、日本の美味しいイチゴ(完熟イチゴ)は皮が非常に柔らかいため、日本から飛行機でヨーロッパに運ぼうとすると、途中で傷んでしまい、店頭に届く頃には品質が保てません。過去に一部の自治体が超高級品としてロンドンへ空輸した事例がありますが、1パック1万円という価格になってしまい、しかも輸送中に痛むのを防ぐために完熟前に収穫するため、日本のイチゴ本来の甘みが乗っていませんでした。おいしい状態で届けるには、「現地生産」しか選択肢がありません。
もう1つは、日本国内にはすでに美味しいイチゴが安価で溢れており、わざわざ莫大な電気代を払って植物工場で作っても、価格競争に勝てないからです。一方、ヨーロッパのイチゴは硬くて酸っぱいため、日本品質のイチゴを現地で新鮮なまま提供できれば、圧倒的な価格プレミアム(1キロ数万円)を乗せても売れるブルーオーシャンが広がっています。だからこそ、アイスランド現地で生産する意味があるのです。
福谷氏:日本のイチゴの弱点である「輸送の難しさ」を、現地で植物工場を建てることで克服し、競合のいないヨーロッパでブルーオーシャンを独占する。非常に理にかなった戦略ですね。
今年2月に販売を開始されたとのことですが、事業を急拡大していく上での現在の「最大の課題」と、それをどう克服しようとされているのかについて教えてください。
飯野氏:実は、今年2月に初の収穫と販売に成功した直後、工場内でイチゴの病気が発生し、収穫量が一時激減するという大きなトラブル(壁)に直面しました。
そこで私たちは、この半年間で栽培オペレーションを根底から見直しました。
従来は日本から苗を空輸して植えていたのですが、これを病気のリスクが極めて低い「日本の品種の『種』から現地で育てる栽培方法」へと切り替えました。さらに、日本から熟練のイチゴ農家の方をアイスランド現地に派遣し、24時間の徹底した生産管理体制を再構築しました。
この対策により、すでに病気の克服と安定生産の体制が整い、この11月からは満を持して、通年の大量収穫・大量販売のフェーズへと入る準備が完了いたしました。
福谷氏:病気の発生というハードウェア・農業ならではのトラブルを、種の栽培への移行とプロ農家の派遣で素早く自己治癒(クリア)されたのですね。実行力の高さに驚かされます。
アイスランド大統領へのPRや万博との連携など、国や大使館をも巻き込む突破力で、世界一の日本のイチゴがヨーロッパ全土に広がる日を非常に楽しみにしております。ありがとうございました。
飯野氏:ありがとうございました。