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📊 Event Report

【株式会社マテリアルゲート】半導体の消費電力を極限まで下げる「単分子誘電体」。AI時代の電力危機を救う、広島大学発ケミカルスタートアップの挑戦

VENTURE PITCH ONLINE
2025/10/02
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AIによる電力爆食いを材料の力で解決。広島大学・西原教授と挑む単分子誘電体の実用化

皆さん、よろしくお願いいたします。株式会社マテリアルゲート代表取締役の中野佑紀と申します。

弊社は、冒頭にもご紹介いただいた通り、広島大学発のディープテック・スタートアップです。2023年に創業し、現在3期目を迎えています。事業セグメントとしては、私たちが研究開発した「単分子誘電体(たんぶんしゆうでんたい)」というナノ素材を製造・供給する化学(ケミカル)メーカーとしての立ち位置をとっています。現在はシードラウンドの段階で、約1年前に最初の資金調達を完了し、資本金等7,300万円で開発と経営を推進しています。

共同創業者には、広島大学理学部の西原教授が名を連ねています。彼が2017年から2018年にかけて基礎研究論文を発表し、学術的に極めて高い評価を得ていた「単分子誘電体」という非常にユニークな材料を、いかにして社会で使える形に実用化(製品化)するかという目的で立ち上げたのがマテリアルゲートです。

私自身はもともと西原教授の学生(研究室のメンバー)であり、大学を卒業した後は約10年間にわたって民間企業に勤務し、ビジネスの実務を経験してきました。しかし、この大学発の非常に面白い素材を埋もれさせずにビジネスの力で世の中に普及させたいという思いから、再び大学の技術と合流し、この会社を起業したという経緯がございます。

創業に当たっては、広島県様や地元広島の皆様に全面的に支えていただきました。「広島ユニコーン10」プロジェクトへの採択をはじめ、ひろしまスタートアップ推進機構(ジェイスタートアップ叡智)様、そして広島銀行(ヒロギン)様などから強力なご支援とネットワークをいただき、事業化のベースを整えることができました。現在は、私を含めて約15名という規模のチームであり、メンバーのほとんどが大学などのアカデミアにゆかりを持つ優秀な研究者・技術者エンジニアで構成されています。

私たちの企業理念は「素材の力で未来をつくる」です。歴史的に見ても、日本の素材産業・化学メーカーの国際競争力は極めて強く、優れた素材こそがデバイスや半導体のイノベーションを生み出す源泉となってきました。この素材の強みを軸にして、半導体や電子デバイスの産業そのものをアップデートするような製品を世界へ送り出したいと考えています。

私たちがまさに素材の力で解決しようと挑んでいる社会課題が、AIの急速な普及に伴う「半導体の消費電力爆発(省電力化)」の課題です。

現代の生成AIやデータセンターの進化は目覚ましいですが、一方でそれらを動かすための電力消費量は文字通り桁違いに増えており、世界のエネルギー危機のボトルネックとして大きく懸念されています。私たちは、このAI時代の電力を下げるために、デバイスの設計や回路の工夫だけでなく、大元である「材料の力」によってブレイクスルーをもたらします。

DRAMの電力を劇的にカット。ナノサイズで電気を貯める新素材を最先端半導体に搭載する

私たちがフォーカスしているターゲットは、コンピュータ内の記憶装置である「メモリ」の消費電力カットです。

現在、スマートフォンやPC、サーバーなどあらゆるコンピュータのメモリの中で最も電力を消費しているのが、半導体大手が製造している「DRAM(ディーラム)」です。DRAMは非常に高速で高密度、高性能なメモリですが、情報を維持するために常に電気を流し続ける(リフレッシュする)必要があり、その消費電力が非常に大きいことが技術的な弱点となっています。

マテリアルゲートが開発した新材料は、このDRAMをはじめとする次世代メモリの中にわずかに組み込むだけで、その消費電力を一気に、劇的に落とすことができるポテンシャルを持っています。

単分子誘電体とは、極めてシンプルに言えば「分子レベルの極小サイズで、電気を貯める(保持する)ことができる材料」です。電気を貯めることで材料の内部がプラスとマイナスに分かれ、この分極状態を維持することによって、電気を遮断しても「0と1」のデータを記録し続けることができるメモリ(強誘電体メモリ)を実現できます。

実は、このように電気を溜める「誘電体」を用いたメモリの研究は古くから存在していました。しかし、従来の材料は小さく(薄く)しようとすると、その性質(電気を保持する能力)が失われてしまうという物理的な限界(ボトルネック)があり、最先端の超微細な半導体プロセスに搭載することが不可能でした。

これに対して、私たちの「単分子誘電体」は、ナノサイズまで極限に微細化・薄膜化しても、その優れた電気保持特性が全く劣化しないという驚異的な特性を持っています。これこそが、最先端の微細半導体に強誘電体メモリを搭載可能にする世界唯一のソリューションです。実際の物質としては白い塩のような粉末で、原料を適切に合成することによって製造されます。

私たちのビジネスモデルは、この「単分子誘電体」素材そのものを製造・販売するケミカルビジネスに加え、それをメモリやデバイスに効率的に組み込むための「デバイス設計・精密加工技術」をパッケージ化し、世界中の半導体・デバイスメーカーへ「技術ライセンス(知的財産)」として供給するスタイルを想定しています。

現在、事業の軸は2つあります。

1つは、国の補助事業(国家プロジェクト)を活用し、長期的な研究開発を進めている本丸の「半導体メモリ」事業です。半導体メモリは極めて市場インパクトが大きい一方で開発に時間を要するため、国の強力な資金サポートのもとで大手メーカーとの協業設計を進めています。

もう1つは、より技術的な実装ハードルが低く、足元での実用化が先行して進んでいる「コンデンサー(電気を一時的に蓄える部品)」事業です。コンデンサーメーカーやユーザー企業様において、私たちの材料を使ったデバイスの評価・テストが進められており、いずれの事業も「デバイスの圧倒的な小型化と省電力化」に高い魅力を感じていただいています。

ファブレス戦略によるライセンス展開。巨大なメモリ市場のすべてをリプレイスする野望

私たちは、自社で巨大な半導体製造ラインやクリーンルームなどの製造設備を抱えることはせず、徹底した「ファブレス」での事業拡大を志向しています。

なぜなら、最先端半導体(例えばTSMC様のようなメガファウンドリ)の製造ラインと同等の工場をスタートアップ単体で持つことは物理的に不可能です。コアとなる材料合成のノウハウや精密加工のパッケージシステムはブラックボックス(特許および技術ライセンス)として私たちが握り、実際のデバイス量産はパートナーとなる大手半導体ファンドリの工場へ委託・供給する形をとることで、スピーディかつ効率的に世界市場へアプローチしていきます。

メモリ市場は言わずもがな数兆円規模の超巨大市場です。

私たちの野望は、この世界中のメモリをマテリアルゲートの技術でリプレイスし、AI時代のサーバーやデバイスの電力を一掃することです。まずは技術的なハードルの低いコンデンサーや限定的なメモリ領域からしっかりと社会実装のステップを刻み、確実に半導体の本丸へと攻め入ります。

私たちは、素材の力で世界のデバイス構造を根本から変えるディープテックです。デバイスの消費電力削減に悩む企業の皆様、そして私たちの材料開発をさらに加速させてくださる投資家・パートナーの皆様との協業を期待しております。ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

コメンテーター(古子氏):中野さん、非常に興味深いプレゼンテーションをありがとうございました。データセンターの爆発的な増加やAIの消費電力問題は、まさに現代の産業界全体が頭を抱えているテーマです。材料という最も深いレイヤーからその課題にアプローチするマテリアルゲートの技術は、今後のデータインフラの持続可能性を握るキーテクノロジーになると感じました。

理系の話に詳しくない文系からの質問で恐縮なのですが、共同創業者の西原教授が発見された「単分子誘電体」というこの新素材について、御社はどのような独占権や優位性を持たれているのでしょうか。他の化学メーカーが同じような素材を抽出・製造して真似することはできないのか、特許や技術のブラックボックス化について教えてください。

中野氏:ご質問ありがとうございます。

まず材料の特許そのもの(基本特許)につきましては、もともと広島大学が保有していた複数の有力な特許群がございましたが、これらは現在、すべてマテリアルゲートが譲渡を受ける形で「弊社が100%単独で保有している特許」となっております。そのため、他社がこの特許物質を勝手に使用することは法的にできません。

さらに、私たちが持っている重要な優位性は、その特許材料をデバイスに組み込むための「周辺加工技術」にあります。

半導体において、新材料を実際に使用するためには、その材料を「いかに極限まで薄い膜(ナノメートル単位)として均一にコーティングするか」、そして「その膜をどうやって精密に削り、必要な電極や回路パターンとして残すか」という精密加工のプロセスが死ぬほど重要になります。

これは、大学のアカデミアの研究室だけでは構築が難しい、非常に泥臭く高度な製造技術です。私たちは、この「材料の精密薄膜化とエッチング・加工技術」を独自のパテント技術として出願しているほか、一部の極めて重要な合成比率や温度管理といった製造条件については、あえて特許公開せずに社内の「秘匿ノウハウ(ブラックボックス)」として厳重に管理しています。この二重のプロテクションにより、他社に対する強固な参入障壁を構築しています。

古子氏:なるほど。基本特許を譲り受けて独占しているだけでなく、実際に半導体の薄膜として加工するプロセスそのものをノウハウと周辺特許でガチガチに防衛しているわけですね。非常によく理解できました。

もう一点、この材料についてですが、レアメタルのような天然資源から「抽出」してくるものなのでしょうか。その場合、地政学的リスクや調達量の制限がスケールの足かせにならないか気になりました。あるいは、通常の化学物質のように完全にラボで合成・量産できるものなのでしょうか。

中野氏:結論から申し上げますと、自然から抽出するのではなく、一般的に流通している化学原料を購入してきて、ラボや工場で科学的に「合成」して製造する物質になります。

したがって、原料の調達に関しては理論上無制限に製造・増産することが可能です。

ただし、私たちの材料の骨格には無機物やいくつかの金属系元素(いわゆるマイナーメタル・レアメタルに類するもの)を一部使用しております。そのため、原料調達の面で特定の国の輸出規制や国際情勢(地政学的リスク)による価格変動の影響を間接的に受ける懸念はゼロではありません。

しかしながら、使用している元素自体は極めて特殊で入手困難な超レアメタルというわけではございませんので、サプライチェーンが完全にストップするような大きなトラブルになるリスクは極めて低く、量産に向けた調達体制に深刻な懸念はありません。

古子氏:加工物であるため合成で量産可能であり、原料も一般的な金属系のものであるため大きな調達懸念はないとのこと、安心しました。

最後のスライドにあった「ファブレス戦略」は非常に合理的だと思います。半導体工場を建てるのは天文学的な設備投資が必要ですが、ファブレスにすることでコア技術に集中し、TSMCや大手ファウンドリの莫大な量産能力をそのままレバレッジできますね。

日本が誇るべき非常に素晴らしい材料技術であり、かつAI時代にジャストフィットしたソリューションだと思いますので、今後のグローバルなライセンス展開を心から期待しております。ありがとうございました。

中野氏:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。