皆さん、よろしくお願いいたします。ムービン株式会社代表取締役の荒巻光生と申します。
弊社は福岡に本社を置き、現在私を含めて4名のメンバーで運営しているモビリティスタートアップです。創業チームには、過去に上場企業への事業売却(バイアウト)を経験したメンバーもCEOとして参画しており、強力な経営基盤を備えています。
私自身の経歴といたしましては、学生時代にプロサッカーチーム「アビスパ福岡」で3年間インターンシップを経験し、主に学生をスタジアムへ集客する企画に携わっていました。その活動を通じてアビスパのトップスポンサーであるアパマングループの代表に目を留めていただき、起業を前提としてグループに入社しました。その後、1年間の修業期間を経て独立起業いたしました。
起業後はB2Bのマッチング事業などを行っていましたが、ひょんなことからレンタカーの業務委託を受けたことをきっかけに、2年前に自社ブランドを立ち上げ、本格的にレンタカー事業へ参入いたしました。
私たちが着目したのが、現在のレンタカー市場が抱える巨大な歪みと、地方の交通課題です。
日本のレンタカー市場は、インバウンド観光の急増も手伝い、2030年までに1兆円を超える規模に拡大すると言われています。しかしその一方で、旅行の際に「レンタカーの価格が高すぎる」「地方に行くと車が全く借りられない」という課題を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
なぜレンタカーの価格が高騰しているのか。
その原因は、大手のレンタカー会社が採用している「フランチャイズ(FC)」を軸とした重厚なビジネスモデルにあります。大手は店舗の維持費、スタッフの人件費、高騰するパーキング代、さらに新車や中古車の車両購入費など、膨大な固定費とランニングコストを抱えています。そのため、地方で展開する場合は、かなりの台数を置いて高回転で回さなければ利益が出ません。さらに人手不足によって、地方では車のメンテナンスをするスタッフすら確保できない状況です。
結果として、大手パーキング会社などがレンタカーやカーシェアの料金を値上げせざるを得ず、ユーザーにしわ寄せがいっています。
一方で、地方のモビリティ環境はバス路線の赤字廃止やドライバー不足により、住民や観光客の足が不足する深刻な事態に陥っています。若者の可処分所得が減っているにもかかわらず、移動に必要なレンタカーの価格だけが上がっていくという悪循環が起きているのです。
私たちは、この課題を「地域エンタメ(地元のスポーツチーム)」と「徹底したDX」の力で解決し、従来の半額以下となる「12時間1500円」で利用できる新しいレンタカーの仕組みを構築しました。
私たちが展開しているのが、「スポーツアポレンタカー」です。
これは、地域のプロやアマチュアのスポーツチームと連携し、チームのエンブレムやマスコットで車両をフルラッピングしたレンタカーを運用するモデルです。そして、そのラッピングの一部に地元の協賛企業の「広告枠」を設け、広告収入を得る仕組みになっています。さらに、レンタカー売上の10%を提携するスポーツチームに直接還元し、地域チームの活動資金をサポートします。
このモデルによって、ユーザー(借りる側)には驚くべきメリットを提供できます。
ユーザーは、お気に入りのチームがデザインされた綺麗なレンタカーを、「12時間1500円」という業界最安値水準で借りることができます。
安さの理由は、徹底したDXによる「無人運営」と「極限まで抑えた固定費」にあります。
私たちは、レンタカーの貸出オペレーションを完全にデジタル化しました。ユーザーは、使い慣れたLINEから申し込みを行い、免許証のアップロード、本人確認、決済まですべてスマホ上で完結できます。車両の鍵の受け渡しもAPI連携による無人キーボックスやスマートキーを使い、24時間いつでも対面スタッフなしで出発・返却ができる仕組みを構築しています。
一般的な大手のレンタカー会社では、店舗やスタッフの固定費を賄うために、車1台あたり月10万円前後の維持コストがかかっています。そのため、1台あたり月14万〜15万円を売り上げなければ赤字になってしまいます。
一方、私たちのモデルは無人化と固定費の削減を徹底しているため、低い売上でも十分に利益が出るコスト構造を実現しています。さらに、車体に「月6万円」程度の企業広告枠が1枠入るだけで、レンタカー自体の料金を限界まで下げても、利益率が劇的に跳ね上がる仕組みになっています。
地方でわずか数台からでも黒字化できるこの軽いオペレーションこそが、地方モビリティを支える強力な武器です。
私たちが「スポーツチーム」という地域エンタメと組むのには、強い理由があります。
私がアビスパでのインターン時代、50社以上のスポンサー企業様とお会いする中で、多くの企業が「地元のチームを応援して地域社会に貢献したいが、スタジアムに看板を出すだけでは、どれだけ地域に貢献できているのか効果が見えにくい」という悩みを抱えていることに気づきました。
私たちのラッピングレンタカーが街中を走り回ることで、協賛企業の「地域貢献」が日常の風景としてリアルに見える化されます。
さらに、単なる「企業の営業看板車」であれば一般の旅行者や若者は乗りたがりませんが、「お気に入りの地元のスポーツチームを応援する車」であり、かつ「12時間1500円」という圧倒的な低価格であれば、喜んで乗ってくれます。これにより、広告効果と地域モビリティの解決、そしてスポーツチームへの還元という、すべてのステークホルダーがメリットを得る三方良しの関係が作れます。
行政や地元の金融機関からもこの地域貢献モデルは高く評価されており、地域の足不足を解決する手段として、自治体予算や地域ファンドとの連携も進んでいます。現在、すでに全国20チーム・17地域での展開が決定しており、アライアンスのスピードは加速しています。
今後の私たちの最大の挑戦は、「車両調達」のスピードを上げることです。
レンタカー事業を急拡大する上で、最もネックになるのは車の購入資金です。私たちは、これを解決するために4つの調達スキームを推進しています。
1. 広告費先行購入: 2年で60万円といった企業広告を先行販売し、その資金で車を調達する。
2. 中古車の投資商品化: 企業や個人投資家に車を購入していただき、投資商品としてレンタカー運用を委託してもらうモデル。
3. 中古車販売店との在庫連携: 中古車販売店の長期在庫をレンタカーとして預かって運用し、2年後に車を返却して販売店が再販するスキーム。
4. 地域モビリティファンドの設立: 地銀や自治体と「地域モビリティ1000万円ファンド」を立ち上げ、その資金で10台の車を購入し、4年後にリースバックで償還する仕組み。
私たちは、単なるレンタカー会社ではなく、地域の移動手段を支え、地域のIP(知的財産)を活用するプラットフォーム企業として、上場目標である「5000台」の展開を目指して走っています。このビジョンを共に進めてくださる広告主様、スポーツチーム関係者の皆様、そしてパートナー企業様からのご連絡をお待ちしております。ありがとうございました。
コメンテーター(福谷氏):荒巻さん、プレゼンテーションをありがとうございました。12時間1500円という圧倒的な低価格でレンタカーを提供し、それをスポーツチームのファンエンゲージメントや企業広告と組み合わせるという設計は、非常にビジネスモデルが美しく、聞いていて応援したくなる仕組みだと感じました。
質問ですが、車両をラッピングして広告枠として売るという点について、車体スペースには物理的な限界(アッパー)があるかと思います。この広告収入のスケールや限界についてはどのようにコントロールしていくお考えでしょうか。
荒巻氏:おっしゃる通り、1台の車体に掲載できるラッピング広告のスペースには物理的な上限があります。
そこで私たちは、車体のラッピング広告だけに頼らない、次の広告・データビジネスの設計を進めています。
具体的には、車内のDXです。走行データを取得して「どのような属性の人が(例:若い女性4人組)、どこに向かっているか」を行き先予測技術で可視化します。そのデータをもとに、車内に設置したデジタルサイネージで、目的地の近くにある店舗の広告を流したり、音声と連動したプロモーションを流したりする仕組みです。車体の「看板広告」から、車内の「パーソナライズ・アドテック」へと広げることで、広告単価の限界を突破していきたいと考えています。
福谷氏:なるほど。走行データや搭乗者属性に合わせた車内サイネージや音声広告で、ラッピング以外のアドビジネスに拡張していくわけですね。
もう一つ、レンタカー事業において最もハードルが高いのが先ほどおっしゃった「車両の調達」だと思います。今後、全国展開に向けて一気に台数を拡大していくための具体的なステップや計画について、もう少し詳しく教えていただけますか。
荒巻氏:はい。車両調達のハードルを越えるために、現在いくつかの並行スキームを試しています。
最も堅実なのは、2年間で60万円といった広告枠を企業様に先売りし、その広告収入を原資にして車を1台購入して増車していくモデルです。
これに加えて、中古車販売店様との提携を進めています。中古車店には、売りたいけれども展示場で眠っている長期在庫車があります。それを私たちが無償または低価格でレンタカーとして預かって稼働させ、2年後にメンテナンスが行き届いた状態で返却します。中古車店側にとっては、寝かせておくよりレンタカーとして利益を生み、さらに2年後に中古車として再販できるためメリットがあります。
また、地方銀行様や地元の行政と組み、1000万円程度の「地域モビリティファンド」を立ち上げ、その資金で一気に10台の車を購入して運用し、リース料からファンドの出資者へ元本と配当を返していくような地域金融スキームも現在実証を進めています。
福谷氏:中古車の長期在庫活用や、地方銀行と組んだ地域モビリティファンドは、自己資金を抑えて一気にアセットを調達できる非常にスマートなアプローチですね。
最後に、協賛される広告主(企業)側の視点として、やはり「広告効果(どれだけ問い合わせや売上に繋がったか)」という数字の成果を厳しく求められる部分もあるかと思います。この広告効果のデータ化や証明についてはどのように対応されているのでしょうか。
荒巻氏:実は、私たちは広告主の企業様に対して「コンバージョン(問い合わせ数や売上)としての広告効果」という売り方は一切していません。
なぜなら、WEB広告などと数字の対決をしてしまうと、どうしても費用対効果で見劣りしてしまうからです。
私たちは、このサービスを「地域貢献(CSR)」および「採用ブランディング」のツールとしてご提案しています。
例えば、車内のステッカーやLINEアプリ画面において、「今回あなたが12時間1500円という安さで車を借りられているのは、〇〇社様の協賛のおかげです」というメッセージを必ず可視化し、ユーザーから協賛企業への感謝を生む設計にしています。
また、私たちのレンタカー利用者の7割は20代、8割は30代以下の若者です。地元の中小企業様が協賛して街中をアビスパの車が走ることで、就職活動中の若者や転職を考えている若い世代に対して「この会社は地元のスポーツチームを応援し、若者のモビリティを支援する地域貢献企業なんだ」という強いブランディングになります。この「数字に出にくいが、企業のイメージと採用に劇的に効く価値」をご説明し、価値を感じていただける企業様にご協賛いただいています。
福谷氏:なるほど。「広告」として競うのではなく、「採用」や「CSR」としてのブランディング価値を明確にすることで、他社と競合しない独自の協賛単価を作れているわけですね。若者に特化した採用ブランディングというのは、人手不足の中小企業にとって非常に刺さる訴求だと思います。
ビジネスモデルが非常に美しく整理されており、今後の全国5000台の展開がとても楽しみです。ありがとうございました。
荒巻氏:ありがとうございました。