← VPO Blog に戻る
📊 Event Report

サービス・イノベーション株式会社:注文住宅の意思決定プロセスを変える「住宅AIコンシェルジュ」

VENTURE PITCH ONLINE
2026/01/29
Cover

地方にこそ眠る、注文住宅ビルダーの巨大なマーケット

皆さん、こんにちは。サービス・イノベーション株式会社代表の梅村 征敏と申します。本日はよろしくお願いいたします。

私たちは、注文住宅業界に特化したバーティカルプラットフォームおよび生成AIエージェントである「住宅AIコンシェルジュ」を開発・運営しています。

まず前提として、注文住宅のマーケットが現在どのようになっているかをお話しします。少子高齢化や人口減少に伴い、注文住宅業界の市場自体はシュリンク(縮小)傾向にあります。しかし、それでもなお市場規模は極めて巨大であり、人生で最も大きな買い物であることには変わりありません。

この業界の中心にいるのは、一般的には大手のハウスメーカーや、各地にある住宅展示場だと思われがちです。しかし実は、市場の大部分を占めているのは地域密着型の「ホームビルダー(工務店)」なのです。また、住宅価格は東京などの大都市圏であれば土地込みで1億円、2億円に達することも珍しくありませんが、地方に行けば20代や30代前半の若いファミリー層が家を建てることが当たり前になっています。私たちは、この「地方のホームビルダーと若年ファミリー層」の市場にこそ、非常に大きなイノベーションのチャンスがあると確信しています。

ユーザーと住宅会社を取り巻く「4つの大きな変化」と新たなペイン

過去10年以上の間、家づくりを考えるユーザーはとにかく情報が不足していたため、自分たちの足で複数の展示場を回って情報を稼ぐしかありませんでした。その結果、多くの住宅会社を巡るものの、どこにするか決められないという状況に陥っていました。住宅会社側の対策も、「どのように自社を差別化し、営業で囲い込むか」というプッシュ型の営業スタイルが主流でした。

しかし今、業界には大きく4つの変化が押し寄せています。

1つ目は、Instagramや各種SNSの普及により、ユーザーの「理想」と同時に「不安」が肥大化している点です。「こんな家を建てたい」というビジュアルイメージは膨らむ一方で、実際の見積もりが予算オーバーとなり、設計変更と予算調整の無限ループに陥り、意思決定に疲弊するユーザーが続出しています。

2つ目は、住宅ローンの借り入れに関わる年収や家計状況など、極めてセンシティブな個人情報が含まれるため、友人や知人に相談しづらく、同時に住宅会社のしつこい営業マンを避けたいという心理が働いている点です。

3つ目は、家づくりの良し悪しの判断軸が、かつてのプロ(住宅会社の営業)から、ネットやインフルエンサーなどの素人(一般施主)の口コミへシフトしている点です。

4つ目は、実際に展示場へ行く「リアル選定」を行う前に、ネット上でほぼ候補を絞り込む「デジタル選定」が当たり前になっている点です。

これらの変化により、新たなペイン(痛み)が生まれています。ユーザー側は情報が多すぎて「どの会社を選べばいいか分からない」「見積もりの比較が自分でできない」と悩み、住宅会社側は「価値が伝わる前にネット上で事前選定で落とされる」「価格競争に巻き込まれ、自社ならではの本当の強みが伝わらない」という集客激減の課題に直面しています。

「住宅AIコンシェルジュ」が提供する、納得の意思決定プロセス

私たちが解決する課題はシンプルです。ユーザーが営業マンからのしつこい売り込みを一切受けることなく、自身の理想や予算を整理し、自分に最も合う住宅会社にたどり着くこと。核心は、見積もりの比較における不安を取り除き、納得して契約に進めるようにすることです。一方で住宅会社側に対しては、事前に候補から外れることなく、自社の強みを理解した「ホットリード(契約意欲の高い顧客)」と出会え、値引き競争ではなく相性と価値で選ばれて契約率を高める仕組みを提供します。

これを実現するのが、30代・40代のファミリー層に寄り添う「住宅AIコンシェルジュ」です。

具体的なステップとして、まずはトップセールスマンの知見をインストールしたAIが、ユーザーの要望を丁寧にヒアリングして整理します。その後、ユーザー個別の情報が自動反映された「マイフォームカルテ」を作成します。

さらに重要なのが資金計画です。現在の家賃や年収を入力することで、無理のない住宅ローンの借り入れ枠を算出し、国や地方自治体が実施している複雑な税金控除や補助金・助成金データも自動で反映させ、リアルな予算計画を瞬時に提示します。家づくりには「イメージ」「暮らし」「予算」の3つのバランスが必要ですが、ユーザーが最も不足しがちな住宅会社側の詳細な価格・仕様情報をAIが補うことで、ミスマッチを防ぎます。見積もり比較においても、各社で異なる算出基準や項目を統一し、納得感のある意思決定をサポートします。

月額1万円からのハイブリッドな成果報酬モデルと今後の戦略

私たちのビジネスモデルは、住宅会社側から月額1万円のシステム利用料と、マッチングから成約に至った際の成果報酬を受け取る形をとっています。注文住宅の平均契約単価は3,000万円ほどであるため、成約時の成果報酬(約5%)として、1件あたり150万円程度を受け取る構造です。

既存のポータルサイトは単なる「情報比較サイト」ですが、私たちは「ユーザーの意思決定プロセスそのものを支援するエージェント」であるため、立ち位置が全く異なります。住宅会社から見ると、AIが事前にユーザーの要望や資金力といった「カルテ」を完璧に整理してから送客するため、営業コストやマーケティングコストをほぼ半減させることが可能です。

トラクションとしましては、すでにベータ版をリリースしており、16社の住宅会社と提携・契約を結んでおります。ユーザーのクリック率、および住宅会社の提携希望度が非常に高く、非常に大きな手応えを感じています。今後は対象エリアや注文住宅以外の分譲住宅などへ領域を拡大し、最終的には全国展開を目指します。さらに、単なる送客プラットフォームに留まらず、住宅会社のマーケティングや営業活動そのものをAIで代替するSFA(営業支援)システムへの進化も計画しております。

注文住宅の購入という、人生最大のライフイベントにおいて、不透明だったプロセスをデータで透明化し、新しいスタンダードを築いてまいります。本日はディスカッションや共同で取り組めるパートナーの皆様とお会いできることを楽しみにしております。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答・フィードバック

中澤氏(コメンテーター):ありがとうございました。住宅の購入や不動産の領域は、最もデジタル化が遅れている分野の一つだと思います。だからこそ、中立的なAIによる意思決定支援というのは非常にイノベーティブだと感じました。今後はAIエージェントが成約に直接コミットする方向へシフトしていくと思いますし、その中心にいけるといいんじゃないかなと思うのですが、このAIが提示する適正な価格とか意見とかの新鮮性を担保するとか、御社はどういうデータとかアルゴリズムを組み込んでいるのか、技術的なところを一つ知りたいなというふうに思いました。また、サービスはまだ正式リリースされていないのでしょうか?

梅村氏:ご質問ありがとうございます。まず1点目の適正価格の提示やアルゴリズムについてですが、正直に申し上げますと、現段階でAIがすべてを完璧に行うのはまだ難しいと考えております。そのため、AIが初期の要望整理や資金計画の提案を行い、その後の具体的なマッチングや調整のプロセスには、弊社のカスタマーサクセス(人間)のメンバーが介在してサポートするハイブリッドな体制をとっています。価格データに関しましては、提携している有料な住宅会社各社から詳細な価格・仕様データを直接提供いただき、データベースに蓄積しています。実は住宅業界ではネット上に具体的な予算や坪単価のリアルな情報が出ているケースはほぼありません。私たちはクローズドなデータを直接活用しているため、大まかな予算出しの段階であっても、的外れではない正確な予算提案をユーザーに届けることができています。これが私たちの最大の強みです。

中澤氏:なるほど。一般には出ていない一次データを直接握っているからこそ、高い確度で予算比較ができるわけですね。

梅村氏:はい、その通りです。そして2点目の商談率・成約率の改善と役割分担についてですが、10月にベータ版をリリースしたばかりで、現在はアジャイルで高速に検証を回している段階です。そのため確定した最終的な成約率の数値はこれから蓄積していくフェーズになります。しかし、従来の送客サービスのように「なんとなく興味がある」という薄い見込み顧客を送るのではなく、AIが事前に「年収」「現在の家賃」「要望」「必要な部屋数」といった、住宅会社のトップセールスマンが商談で最も引き出したいコアな情報をすべて埋めた『マイフォームカルテ』を作成して送客します。住宅会社側からすると、すでに必要な情報がすべて揃った超ホットなリードが届くため、初回商談の質が劇的に向上し、商談率・契約率、ひいては受注単価の向上が強く期待されています。AIが事前のヒアリングや顧客分析を徹底して代行し、人間の営業マンは「実際のプランの提案や対面での信頼関係構築」という最も付加価値の高い業務に集中する、という明確な役割分担を実現してまいります。

中澤氏:家を建てるというのは人生最大の意思決定であり、これまで不透明でギャンブル性が高かったプロセスが、データに基づいた納得のいく選択肢に変わるのは非常に社会的インパクトが大きいと思います。今後の展開を楽しみにしております。ありがとうございました。

梅村氏:ありがとうございます。情報の透明性を高め、ユーザーと有料な工務店が適切に出会える世界を作ってまいります。ありがとうございました。